研究概要 |
本研究は,高齢者の社会活動性とソーシャル・キャピタルの現状を把握し,社会的ネットワークなど社会的要因との関連を明らかにすることを目的とした.ソーシャル・キャピタルや社会的ネットワークは立地特性による差異が大きいと考えられるため,コミュニティの立地特性が異なる都心(千代田区)と大都市郊外(埼玉県鳩山町)という2地点を選定した.調査対象者は地域に居住する在宅高齢者を対象に,郵送法による自記式調査を行った. 分析の結果,1)高齢者の社会的ネットワークの場合,都心と比べると大都市郊外の方が,社会的ネットワークが強い傾向がみられた.高齢者の社会活動については,活動内容によって地域による回答の差がみられた.2)多変量分析から,都心に居住する人や75歳以上の後期高齢者の人,社会的ネットワークが強い人,社会活動をしている人ほど,ソーシャル・キャピタルが高いことが明らかになった.今回の調査から,ソーシャル・キャピタルでは地域における人間関係,情緒的および手段的サポートが重要であることが示された.社会活動の場合,活動の内容によってソーシャル・キャピタルに及ぼす影響に差が生じる可能性があり,今後,地域行事,ボランティア活動など,公共性の高い活動における参加の勧奨が必要であることが示唆された.
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