研究課題
若手研究(B)
慢性組織炎症における転写因子KLF5の機能について、腎障害モデルを用いて検討した。まず、一側尿管結紮モデルを用いて、腎臓の炎症惹起時のKLF5の役割を検討したところ、KLF5はCEBPa,S100A8,S100A9遺伝子の誘導を通じて、炎症性単球を腎臓に遊走させていた。また、S100A8,S100A9は炎症性単球をM1マクロファージに分化させていた。腎臓の炎症においては、M1マクロファージはIL1bを分泌し、組織炎症を惹起し、M2マクロファージは、IL10,TGFbを分泌し、組織炎症の抑制、繊維化促進に働いていると思われた。KLF5は腎臓の炎症時にM1マクロファージ有意に誘導し、腎臓炎症惹起に関与していることが明らかとなった。また、メタボリック症候群に関する検討においては、肥満脂肪組織でS100A8の発現上昇が認められた。このため、脂肪細胞と炎症性細胞との相互作用におけるS100A8,S100A9の作用を検討した。脂肪細胞から分泌されたS100A8,S100A9は脂肪細胞および炎症性細胞間のさらなる炎症を惹起していることが明らかとなった。つぎに、脂肪組織においても、S100A8,S100A9が炎症を惹起していることを明らかにするために、脂肪組織特異的S100A8過剰発現マウスを作成した。また、新規治療薬の開発については、S100A8,S100A9よりも有望なKLF5の下流遺伝子を同定したが、本研究期間では、その同定までにとどまった。
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