研究課題/領域番号 |
21790812
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
腎臓内科学
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田邊 克幸 岡山大学, 医学部, その他 (40534805)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2010
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研究課題ステータス |
完了 (2010年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2010年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2009年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 慢性腎臓病 / プロスタサイクリン / 線維化 / 炎症 / TGF-β / HGF / 尿細管 / メサンギウム細胞 |
研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)は末期腎不全への進行のみならず、心血管イベント発生のリスクファクターとなる。本邦においてCKDの進展によって末期腎不全から血液透析に至る患者数は増加の一途をたどっており、CKDの進展抑制のための有効な治療法の開発が腎臓内科領域において急務となっている。ONO-1301は構造的に安定な非プロスタノイド骨格の化合物で、長時間作用型のプロスタサイクリン(PGI2)アゴニストとトロンボキサンA2(TXA2)合成酵素阻害作用による強力な抗血小板作用を有する。徐放性製剤ONO-1301MSは皮下もしくは筋肉内投与にて安定した血中濃度を示すが、肺線維症モデルにおける線維化抑制効果、心筋梗塞モデルにおける左室拡張能改善効果、生存率の改善が報告されている。ONO-1301による治療効果の発現機序として、血管平滑筋細胞におけるERKリン酸化抑制、間葉系細胞(線維芽細胞など)からのHGF発現誘導等が検討されている。腎障害が進展する共通のメカニズムである尿細管間質線維化と、糖尿病性腎症における糸球体病変に対してONO-1301が抗線維化作用等を介して進展抑制効果を示す、との仮説のもとに、本研究にて以下の検討を行った。 1) マウス片側尿管結紮(UUO)モデルにおけるONO-1301投与による尿細管間質線維化抑制効果:ONO-1301徐放性製剤(3mg/kg,単回)投与により第3、7病日における腎間質線維化、間質炎症細胞浸潤、I,III型コラーゲン蓄積が有意に抑制された。 2) ONO-1301の尿細管間質線維化抑制への作用機序の解析:ONO-1301投与群では腎皮質における線維化促進因子TGF-βの発現増加が抑制され、同因子に拮抗的に作用するHGF発現増加が観察された。 3) 2型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)における、ONO-1301投与による腎症改善効果:db/dbマウスに8週齢よりONO-1301徐放性製剤(3mg/kg)を3週毎に投与した。16週齢の時点で、アルブミン尿、糸球体メサンギウム基質蓄積の抑制効果が観察された。 4) ONO-1301の糸球体病変改善効果の機序:培養メサンギウム細胞にて高糖濃度培養条件下におけるTGF-β,α-SMA発現増加、IV型コラーゲン産生増加がONO-1301投与により抑制された。 以上の結果より、慢性腎臓病治療におけるONO-1301の有用性が示唆され、将来的な臨床応用の可能性が期待される。
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