研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)に対するJak阻害療法の可能性を検討するため、Jak3 阻害薬CP690,660のリンパ球に対する作用を検討した。その結果、CP690,550は抗CD3抗体と抗CD28抗体(CD3+28)刺激によるCD4陽性T細胞の増殖を濃度依存性に抑制した。また、CD3+CD28刺激により誘導されるIFN-γとIL-17を濃度依存性に抑制した。一方、BCR+sCD40L刺激したB細胞では、CP690,550は増殖能に影響を与えなかった。IFN-γmRNAとIL-17mRNAは、CP690,550により何れも発現が抑制され、CP690,550によるアポトーシスの誘導はみられなかった。以上からCP690,550の主たる標的細胞はCD4+T細胞と考えられ、CP690,550によるサイトカイン産生抑制の一機序として転写抑制の機序が考えられた。SLE 患者でIFN-γ,IL-17の産生亢進が報告され、Jak3阻害療法は、これらのサイトカインの産生を抑制することによりSLEに対する治療法となりうる可能性が示唆された。
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