研究概要 |
本研究は「授乳婦の薬物療法の安全性に関して、臨床薬理学的に根拠ある情報を蓄積し提供すること」を目的とする。頻用されるが情報のない4薬剤(ロキソプロフェン、アムロジピン、エチゾラム、パロキセチン)のうち、平成21年度は当該3薬剤の基本データを集積し得た。倫理委員会承認後、インフォームドコンセントを得た母児から検体を採取した。薬物濃度測定はHPLC-MS(高速液体クロマトグラフ質量分析装置)を用いた。血漿と乳汁濃度曲線下面積より乳汁血漿濃度比(以下M/P比,1以上で濃縮)を算出し、母体投与量に対する児の暴露量である相対乳児摂取量(以下RID,10%以下が安全)を算出した。 1.ロキソプロフェン 2症例から検体を得た。M/P比は0.012と0.013で,RIDは0.11%と0.09%だった 2.アムロジピン 8症例から検体を得た。M/P比は1.5(0.82-2.29)、RIDは3,1(1.5-5.4)%だった 3.エチゾラム 2症例から検体を得た。M/P比は0.181と0.125,RIDは5.96%と6.94%だった 全12症例で授乳後の児血液から薬剤は検出されていない。また現在フォローアップ中だが、全員有害事象なく成長発達は良好である。従って、情報がなく断乳されている3薬剤は、実際には乳汁中に分泌されるが児暴露量は安全域で、児の発育へも影響なく授乳婦に安全に使用可能な薬剤である新知見を得た。 平成22年度以降、主任研究者の進学による補助金終了に伴い、平成21年度に上記結果を周産期シンポジウムで公表し雑誌報告した。今後補助金は終了するが、厚生労働省「平成19年授乳・離乳の支援ガイド」にも科学的根拠に基づく情報提供が急務とされ、本研究は社会的に非常に重要である。研究は継続し症例数を重ねて再度公表し、妊娠と薬情報センターや全国の授乳婦への安全情報提供に活用していきたい
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