研究概要 |
今回われわれは、気分障害において遷延化を引き起こしている生物学的要因を調べるため、双極2型障害患者を急速交代型と非急速交代型に分類したうえで、局所大脳灰白体積とインスリン抵抗性についての比較検討を行った。22歳から57歳までの双極2型障害患者31名(うち、急速交代型群14名、非急速交代型群17名)、および年齢・性別を一致させた健常対照群84名を対象に、採血検査とMRIを施行し、全脳を対象とした局所大脳灰白体積の比較にはVoxel-Based Morphometry(VBM)を用いた。さらに、ブロードマン分類10,11,47領域に焦点をあてた解析には、Wake Forest University Pickatlas を用いた。急速交代型群と健常対照群の全脳比較を行った結果、前部帯状回~前頭前野腹側内側部、海馬傍回、島において、急速交代型群に有意な灰白質体積の減少が見られた。非急速交代型群と健常対照群の比較では、小脳および橋において、非急速交代型群に有意な灰白質体積の減少が見られた。ブロードマン分類10,11,47領域に焦点を当てた検討では、前頭前野腹側内側部において、急速交代型群の有意な灰白質体積の減少が見られた。今回の検討により、急速交代型を示す双極2型障害患者は、非急速交代型に比べて、前頭前野腹側内側部において、有意な灰白質体積の減少を認めることが明らかになった。このことから、前頭前野腹側内側部の障害が、頻回の気分障害エピソードの生成に、深く関与している可能性が示唆された。一方で、末梢採血検査では、血糖値や血漿インスリン濃度などインスリン抵抗性指標と治療抵抗性との関連は見出すことができなかった。
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