研究概要 |
われわれは限局性腎癌において若年性の予後に対する意義を評価し,再発を来した若年性腎癌症例におけるXp染色体転座腎癌の頻度を解析した. 1990年から2007年までの間に東京医科歯科大学およびその関連8施設において,腎癌の術前診断のもとに2,403例の腎摘除あるいは腎部分切除が行われた.そのうち限局性腎癌(pT1-2N0M0)の1,143例を対象とし,その臨床病理学的データを後ろ向きに解析した.対象のうち131例が若年例(≦45歳)であった.術後再発を来した若年例においては抗TFE3抗体を用いた免疫染色によりXp染色体転座腎癌の診断を行い,その頻度を調べた. 対象の観察期間中央値47ヶ月であった.若年群では3例(2.2%),非若年群では51例(5.0%)において癌死が認められ,5年癌特異的生存は前者のほうが有意に良好であった(p=0.049).癌特異的生存における多変量解析では年齢および病理学的T分類,腫瘍グレード,診断時症状の有無が有意な予後予測因子であった.若年であることのハザード比は0.31(危険率0.077-0.87)であった.一方,無再発生存は若年群と非若年群で有意差はみられなかった.自験例における74例の術後再発症例において,再発後の癌特異生存は非若年群に比べて若年群のほうが有意に良好であった(p=0.0010).再発を来した若年群8例のうち,4例はXp染色体転座腎癌であり,そのうち3例は再発後5年以上生存していた. 非若年例に比して腎癌若年例では,無再発生存は同等であるが,癌特異生存は有意に良好である.これは.腎癌若年例において少なくない割合でXp染色体転座腎癌が含まれていることで説明できる可能性がある.
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