研究課題
若手研究(B)
我々は子宮体癌におけるRas-PI3K経路の活性化に着目し、その活性化に関わる因子を網羅的に解析した。また、本経路を阻害するmTOR阻害剤の抗腫瘍効果を子宮体癌細胞株で検証した。1.癌遺伝子AKT1(E17K)の変異を子宮体癌において初めて報告した。AKT1(E17K)変異は子宮体癌臨床検体89例中2例(2.2%)にみられ、この2例はいずれも他のPI3K関連遺伝子(PIK3CA,PTENおよびK-Ras)に変異を有さなかった。2.我々は31例の子宮体癌検体において染色体不安定性、マイクロサテライト不安定性(MSI)、さらにはRas-PI3K 経路の遺伝子変異を含めて、網羅的なゲノム解析を施行した。染色体コピー数異常を5か所以上で有するもの(CIN-Extensive)は29%にみられ、1-4か所(CIN-Intermediate)は55%、コピー数異常なし(CIN-Negative)は16%であった。MSI陽性はCIN-Extensive症例において頻度が低い傾向があった。多変量解析の結果、CIN-Extensiveは独立した予後不良因子であることが明らかとなった。Ras-PI3K経路に関連した遺伝子発現異常は、ゲノム不安定性の種類によらず、子宮体癌において極めて高頻度にみられることを証明した。3.Ras-PI3K経路を標的とした分子標的治療薬として、子宮体癌13株に対してmTOR阻害剤RAD001(eveolimus)を添加した。MTTアッセイにて、細胞増殖抑制能が確認され、特にK-Ras/PTEN/PIK3CAのいずれかが変異陽性である11株のうち、10株で感受性が高かった。
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