研究概要 |
これまで,顎口腔機能を回復・維持することと全身的な健康状態との関連性について,様々な検討が歯科領域を越えて多く行われてきたが,"おいしい"など咀嚼時に生じる情動が,脳および全身に及ぼす影響について詳細に検討した研究は見あたらない. 本申請課題は,被験食品の味や香りの違いが咀嚼時の循環応答に及ぼす影響を詳細に検討することを目的に,味や香りの異なる被験食品を咀嚼時の脳循環(中大脳動脈血流速度と前頭部血流変化),体循環(心拍数と動脈血圧),自律神経活動(心拍血圧ゆらぎ解析)を同時計測し,統計学的分析を行った.また,VASを用いて咀嚼時の主観的情動と,心拍血圧ゆらぎ解析により客観的情動とを比較検討し,味や香りの異なる被験食品を咀嚼した時の情動変化が循環応答にどのような影響をもたらすのかを検討した. 期間中に,味および香りの異なるガムを6種類製作し,実験を行った.その結果,味および香りがある食品が最も脳循環および体循環を亢進させることが分かった.同時に,心臓交感神経は味および香りがある食品を咀嚼した場合が最も亢進したが,血管交感神経活動に差は認められなかった.味および香りについての官能試験の結果と脳循環の変化には相関が認められ,情動の変化が咀嚼時の循環応答に影響を与えている可能性が示唆された.
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