研究概要 |
試料として、Pt-Cu系2元合金と純ニッケルを準備した。Pt-Cu系2元合金はPt70Cu30,Pt60Cu40,Pt40Cu60,Pt30Cu70,Pt25Cu75,Pt20Cu80,Pt10Cu90の7種類を用意した(数字は原子比を表わす)。試験液を0.9%の食塩水として電気化学測定を行った結果、Pt70Cu30,Pt60Cu40,Pt40Cu60は純白金と同じ挙動を示した。一方Pt30Cu70では、-0.6V付近から純白金の挙動から少しずれ、Pt25Cu75,Pt20Cu80,Pt10Cu90の三種類では腐食電位も観察された。これからPt70Cu30,Pt60Cu40,Pt40Cu60では、銅イオンの溶出がないことが示唆された。またこれら合金を電気化学測定終了後、光学顕微鏡とSEMにて表面の組織観察を行った。Pt70Cu30,Pt60Cu40,Pt40Cu60の表面では変化が観察されなかったが、Pt25Cu75,Pt20Cu80,Pt10Cu90では表面で凹凸が観測され、凹凸を分析すると塩化銅(II)が付着しているのがわかった。これらよりPt25Cu75,Pt20Cu80,Pt10Cu90では合金表面から銅イオンが溶出し、食塩水中の塩化物イオンと反応していることがわかった。 純ニッケルにおいては、試験液をタンパク質含有水溶液にし、同様に電気化学測定を行い、電気化学測定後、試験液の紫外可視吸収スペクトルを測定した。紫外可視吸収スペクトルでは、レファレンス水溶液では出現しなかったピークが250nm前後で観察され、タンパク質濃度が高くなるにしたがってピーク位置は長波長側にシフトしていった。純ニッケルの電気化学測定では腐食電位が出現しており、紫外可視吸収スペクトルの電気化学測定後にピークが出現していることの結果と合わせると、電気化学測定中で、ニッケル表面からニッケルイオンが溶出し、ニッケルイオンが試験液中のタンパク質と結合していることが示唆された。
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