研究概要 |
本研究では申請者が以前より研究を行ってきた、核内レセプターPPAR_γ経路の不活性化による抗がん作用のさらなる詳細なメカニズムの検討を目的に行われた。種々のがん細胞(SCCKN, HT-29, Capan-1, KYSE140)において同様にPPAR_γ経路の不活性化による抗がん作用を確認し、その共通のメカニズムの検討のためにGene chip解析を行った。その結果から、10の遺伝子を選出し、それらのsi-RNAを作製し、その細胞増殖、細胞接着、細胞浸潤能をそれぞれ評価した。その結果、GCL(glutamate-cystein ligase)という遺伝子が関与している可能性が示唆され、同分子に対する検討を行った。口腔扁平上皮がん、食道がん、膵臓癌、大腸癌組織切片でのGCL蛋白の癌部での高発現が免疫組織化学染色にて確認された。同様に、繊維芽細胞に比べ上記培養細胞のGCL蛋白の高発現をウエスタンブロット法にて確認した。GCLは細胞内でのグルタチオン(GSH)産生に関与する分子であり、酸化ストレスやフリーラジカルによる細胞障害に関与している。PPAR_γ経路の不活性化により、その下流にあるGCLの発現がコントロールされる結果、ミトコンドリアの膜電位が障害を受けることが確認された。また、電子顕微鏡による検討の結果ミトコンドリアが破壊され、細胞内での数が減少することが明らかとなった。これらは上記4種の培養細胞で確認され、現在論文報告の準備中である。PPAR_γ経路の不活性化による抗がん作用は他施設の研究でも散見されるようになってきているが、本研究が報告は多くの研究者にとって有益なものになると考えられる.
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