研究概要 |
近年,成長期のラットにおいて離乳後,長期間にわたり液状飼料摂取を行なうと咀嚼運動の発達障害を引き起こすことが明らかにされている。過去の報告では,閉口筋筋紡錘は咀嚼機能において顎運動の調節に重要な役割を果たしていることが分かっており,今回我々は,離乳後長期間の液状飼料飼育が閉口筋筋紡錘の機能発達にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的として実験を行った。Wistar系雌性ラット40匹を授乳期である2週齢において,母ラットと共に液状飼料群(20匹)と対照群(20匹)に分割した。離乳後,実験群には液状飼料を,対照群には固形飼料を給餌した。その後麻酔下にて,咬筋筋紡錘単一ユニット活動の記録を5,7,9,11週齢において三叉神経中脳路核より行った。刺激は受動的開閉口運動とした。実験群の動的指数・静的指数は,対照群と比較して,5,7,9,11週齢において有意に小さな値を示した。また、対照群及び実験群の動的指数・静的指数は5,7,9,11週齢において経時的変化を示さなかった。 以上のことから,成長期に長期間液状飼料しか摂取しないというような咀嚼環境の変化は,閉口筋筋紡錘の機能の発達を阻害し,咀嚼学習を阻害する可能性が示唆された。
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