研究概要 |
骨髄間葉系幹細胞を移植することによる歯周組織再生療法が有用であることは既に明らかとなっているが、硬組織の再生に関しては改善すべき点が残っていた。 本研究は,間葉系幹細胞(以下MSC)を移植するにあたり「細胞分化誘導シグナル」としてのβ-TCPと,ヒアルロン酸を併用することによって,より迅速な歯周組織再生療法を模索するものである. しかしながら,本年度については,歯肉線維芽細胞とMSCとの相互作用ではなく,象牙質とMSCの相互作用について検討した.何故なら,MSCが適切な場所で骨・歯周靭帯に分化することは明らかとなっているが,何を認識して骨や歯周靭帯に分化しているのかは不明であるからである. ビーグル犬のMSCをDMEM+10%FBSにて培養し、これを実験に用いた.ヒトの抜去歯牙の象牙質を歯科用切削器具で加工し、乾燥後、Type 1コラーゲンでコートし、これを実験に便用した. 骨分化培地を用いた7・14・21日培養を行い,石灰化の程度をアリザリンレッド染色で評価した.実験群は・MSCを単独で培養・MSCをType 1コラーゲンと培養・MSCをType 1コラーゲンと象牙質片と培養の3群を作成し,比較検討した.その結果,象牙質片を加えた方が,石灰化物の形成が顕著であったことが確認できた.以上のことから,象牙質はMSCの分化には有益であると考えられ,担体としての使用も検討する余地があることが示唆できる.
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