心臓移植が適応となった患者は、移植という新たな生と、待機中の合併症や心臓機能の悪化によっていつかは訪れるかもしれない死との間で待機している。このような過酷な状況下にある心臓移植を待機する患者を支えるためには、看護師個々での対応では限界があり、愚者に関わる医療者のチームアプローチが必要となってくる。 本研究は、心臓移植待機患者を支えている医療者達が、アンビバレントな苦悩を抱えながら心臓移植を待機している患者の「病い」を、どのように認識し向き合っているのか、また患者の「病い」に対する認識が医療者達の実践をどのように形作っているのかを明らかにすることを目的に実施している。 平成21年度は、(1)研究テーマに応じ左文献検索と研究方法論の検討と(2)米国の心臓移植実施施設における心臓移植医療チームの体制や活動の実態を知り、わが国の現状と比較検討するために研修を実施した。米国の研修はテキサス州ベイラー医科大学付属セント・ルーク病院にて実施した。米国は移植医療先進国であり、当該施設でも、一般的な医療として移植医療システムが確立していた。当該施設では、心臓移植患者の外来患者と入院患者各々に2名、計4名のCTCが活動していた。週に1回行われるカンファレンスで施設内での待機リストの更新が行われ、移植待機者の情報把握を徹底していた。CTCの活動は、移植前中後のスケジュールに沿って患者教育(免疫抑制剤等の内服薬について、術後の受診や検査予定、食事、運動、生活上の留意点等)を実施し、検査のオーダーと実施状況、結果の確認等を行っていた。また「移植者の精神的ケアについて、当該施設では移植待機中よりも、移植後に心理状態が不安定になることを問題視しており、移植を受けた患者達のボランティアや専門象等で構成されたサポートチームが、週1回入院患者の元へ赴き、患者の相談に対応したり、心理的サポートを行っていた。また、当該施設の心不全病棟では、医師、看護師、ソーシャルワーカー、チャプレン等で構成されたパリアティブケアサポートチームがあり、心臓移植を断念せざるを得ない患者のサポートや、移植待機者、移植者、ドナーファミリー等の精神的サポートを行っていた。
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