研究概要 |
国の生活習慣病対策の主たる対象は40歳代以降であるが、20~30歳代の運動不足の実態や、健康的な生活に対する意識の低さが報告されている。身体活動に関する研究では、「運動」に関するものは多いが、「生活活動」に対しては少ない。そこで、本研究では、「運動」と「生活活動」の両側面から身体活動を全体的に捉えていく。自ら意識的に身体を動かさなければ運動不足の状態に陥りやすいという特徴を持つ座業的業務に従事する勤労者を対象に、半構成的インタビューを行い、対象の「運動」および「生活活動」の継続に関連する要因を記述し、尺度開発を行った。なお、「準備要因」「実現要因」「強化要因」の構成要素を明らかにするために、Green, Kreuterの提唱するPRECEED-PROCEEDモデル(4^<th> edition)を使用した。「準備要因」は、『必要性の認識』『価値観』『恩恵と負担の認識』『自己効力観』『目標(ゴール)の設定』『過去の運動の直接的経験』、「実現要因」は、『取り組みやすさ』『社会的環境要因』『物理的環境要因』『継続するためのスキル』『ソーシャル・サポートを得るためのスキル』、「強化要因」は、『効果の実感』『得られる報酬』『ソーシャル・サポート』から構成された。結果、汗をかいている自分の姿を恥ずかしいと捉える、この年代に特徴的な価値観が得られた。また、女性から日常生活の負担を軽減したいという認識が得られたことから、性差についても考慮する必要性が示唆された。この尺度に対しは、経験5年以上の産業看護職、地域看護を専門とする大学教員、大学院生の協力を得て、内容妥当性の検討を行った。「運動」や「生活活動」の継続に関連する要因が抽出されることにより、産業看護職が、健診後の個別相談や集団健康教育、健康づくりイベントの企画をするなど、勤労者の健康増進のために効果的な身体活動量を増加させるプログラムを開発する際に活用することが期待できる。
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