研究概要 |
近年,共有仮想空間(Virtual Environment,VE)と拡張現実感(Augmented Reality,AR)や複合現実感(Mixed Reality,MR)などの,多数の仮想的なオブジェクトを配置した仮想空間を様々な用途に活用するための研究が盛んにおこなわれている.これらの技術を用いることで,現実の空間で行われている様々な社会活動に,遠隔のユーザがネットワークを介して仮想的に参加することも可能になる.しかし,これらの従来研究では,一般に,VEでは多人数のユーザを対象とするため,高性能なサーバとそれに見合う大きな通信帯域幅を必要とし,ARやMRでは,現実のユーザの動きを取り込んで仮想空間に合成するために,モーションキャプチャスーツや全方位ディスプレイ,カメラアレイなど,特殊な装置を使うことが多い. 本研究では,CSCW,遠隔教育,仮想商店,ゲームなどの実空間と仮想空間を跨った情報共有によるインタラクションを,高価な機器や特殊なネットワークを用いずに,安価で一般的な機材からなる普及環境で実現し,さらに従来研究でなされていない多人数参加をサポートすることを目標に,リアルタイムに情報を共有するためのシステムおよびミドルウェアの実現を目指して研究を行った. 2年間の研究成果として,システムの実装に用いた,ネットワーク帯域を効率的に利用するためのユーザのコンテキスト推定に基づくQoS適応制御,処理能力の低い携帯端末でも軽快な動作を実現するための擬似3D空間技術,仮想空間と現実空間を重ね合わせるために用いるセンサの位置を効率的に決定するアルゴリズム等の各要素技術について,1本の和論文誌,3本の国際会議発表,6本の国内研究会発表を行った.また,一般公開に向け,ミドルウェアを実装中である.
|