研究概要 |
研究計画に記載したように,本研究の目的は,韻律における離散性と連続性を検証するアプローチを生み出し,それをアクセントやイントネーションの諸現象に適用することである。これは,研究の客観性を高めるという点で,韻律研究において大きな進展をもたらしうる。1年目の本年は,当初の予定通り,アクセントを対象とし,高音声変異連続再生課題(high phonetic variability sequence recall task)を試した。 高音声変異連続再生課題は,被験者に2通りの無意味語を学習してもらったのち,これらの音声を連続して聞かせ,単語の順番を当てさせるという実験である。共通語話者(南関東出身者)のほかに,方言学において伝統的に無アクセントといわれてきた南東北の出身者も被験者とした。実験の結果は,高音声変異連続再生課題がアクセントの離散性の検討に有効であることを示すものであった。この手法はこれまでとられてきた範疇知覚実験のようなアプローチよりも頑健であると考えられ,その点において方法論上の進歩をもたらすものである。研究結果は2010年5月にシカゴで開催される国際会議Speech Prosody 2010において発表する予定である(採択済み)。 その一方で,当研究課題が採択される以前から行っていた朝鮮語慶尚道方言の研究の結果が,学術誌Language Researchに掲載された。これは,慶尚南道馬山・昌原方言において二つの音調型が合流しつつあることを示したものである。朝鮮語のアクセントは当研究課題における検討対象の一つでもあるため,この論文で扱った内容は当研究課題の基礎をなすものでもある。
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