研究概要 |
本研究では、青年期を対象に解離アセスメントを精緻化させることとそれに伴う心理療法への利用可能性を探ることを目的とした。研究1では、精神科患者31名(男性11名、女性20名、平均31.45歳)を対象に日常的解離尺度、解離性体験尺度からなる質問紙を実施した。結果、精神病群(N=3)は解離得点全般が高い、気分障害群(N=3)は感情切替傾向が低く、没頭傾向が高い、不安障害群(N=7)は、健忘、没頭傾向が共に高いことが示唆された。研究2では、成人2事例に対し、上記質問紙とバウムテスト、ロールシャッハ・テストを実施した。結果、日常的解離尺度とバウムテスト、ロールシャッハ・テスト結果と一致しているものの、病的解離と質問紙法の一致については更なる検討を要した。研究3では、ある青年の心理面接事例を抽出し、日常的解離の視点に基づいた事例理解の重要性を検討した。事例分析の結果、引きこもりがちな青年の日常的解離体験をセラピストが正確にアセスメントし,共有することで自己世界から現実世界への橋渡しが促進される,という仮説が生成された。
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