本研究の目的は地方における「コンパクトシティ」の形成が財政状況にどのような影響を与えるかを実証分析で示すことである。分析に用いるデータの選択には地方公共団体や市民団体からの聞き取り調査の結果を反映させた。実証分析を2種類行い、まず都道府県データを用いてDID人口比率に関して新設道路事業費と道路維持費を統計的に有意に減らす可能性を示した。また都市データを用いて市街地への居住者増加や商店街での小売業者売場面積の増加等の行政支出への統計的な効果は確認できず、都市内街路割合や都市内の都市計画数は行政支出を増すことを示した。分析を通して、先行研究において行政支出の削減につながると語られることの多い「コンパクトシティ」の形成効果に対して、結果があるとは限らないことを示せた。
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