研究概要 |
本研究は土壌水分の初期情報を用いた水文水資源量の準季節予報スキルの評価を目的としたものである.申請者らのこれまで全球気候モデル(General Circulation Model ; GCM)を用いた研究成果において,土壌水分の湿潤状態は夏の降水量偏差に重要な影響を与える要因であることが明らかにされてきた.一方,地表面以深の土壌水分は初期値の影響(メモリ)が1~2か月間程度持続することが示唆されており,これは大気のメモリ(1~2週間)と比較して極めて時定数の長いものである.これらの研究成果を合わせると,土壌水分の初期情報は1~2か月(準季節)予報の精度向上をもたらす可能性を有するが,これまで科学的噂の範疇を出るものではなかった.本研究において,人工衛星や現地観測により得られたデータと陸面過程モデルを用いて計算される"準観測"土壌水分データを初期値としたGCMによる過去10年間の予報実験を行った結果,準季節スケールの降水量をはじめとする水文水資源量の予報精度がある程度改善されることが判明した.特に,1988年に北米を襲った大旱魃や同地域に大洪水をもたらした豪雨を2週間前以上前から予測するには,土壌水分の初期情報が必要不可欠であるという結果が得られた.
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