研究概要 |
本研究の目的は,サーモグラフを用いてコムギ植物体の蒸散を推定し、群落レベルでの水ストレスの程度を評価することである. シリアで育成されたコムギ系統と日本国内で育成された系統の葉気温較差(葉温と気温の差)を,サーモグラフを用いて調査した.その結果,収量が最も低かった日本系統の葉気温較差は,播種後35日から出穂期である播種後57日の期間において,最も高い値で推移していた.このことは,幼穂形成期を含む生育前期において,この系統は植物体内で水ストレスが生じた可能性を示唆している.これにより,この系統では,小穂の分化を充分に行うことができず,子実収量の低下をもたらした一穂粒数の減少が生じたものと推察された.以上のように,サーモグラフを用いてコムギの群落温度の品種間差異を調査可能なことが,本試験により確認された.
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