研究概要 |
シロイヌナズナが有する機能喪失型SP11/SCRの変異を人工的に修復し、その正常機能型SP11/SCRをシロイヌナズナに遺伝子導入することで、自家不和合性シロイヌナズナを作出した。これは、シロイヌナズナは自家不和合性を失うことで他殖から自殖へと進化したことを裏付けており、その崩壊のきっかけは自家不和合性雄性認識因子であるSP11/SCRの変異に起因することを明らかにした。上記変異は、解析に用いた大部分(約95%)のヨーロッパ系シロイヌナズナエコタイプが有しており、その分布はヨーロッパ各地に自生するエコタイプの地理的分布パターンに一致していた。またその変異が生じた時期は、現在から約41万年以内であり、交配相手が少なかったと考えられる氷河期と一致することを明らかにした。 この結果は、ダーウィンが「植物の受精(1867年)」で唱えた「交配相手が少ない条件下では自殖が繁殖に有利な性質となる」という説を裏付ける結果である。Brassica属については、昨年度実施したアブラナ科自家不和合性関連因子(SP11,SRK,MLPK,ARC1,THL)の国際共通連鎖地図へのマッピングに加え、保有するB.rapa自家和合性突然変異体の解析を行うことで、新規自家不和合性関連因子の探索を行った。独立2系統(TSC4,TSC28)の解析により、両系統とも上記自家不和合性関連因子はすべて正常に機能しており、自家和合性の原因は新規因子によることを明らかにした。さらにそれら原因遺伝子は、それぞれA1,A3連鎖群に座乗し、上記関連因子とは独立することを遺伝学的に明らかにした。
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