研究概要 |
成熟ラット網膜をコラーケンケルに包埋し、正常濃度、高濃度グルコースで培養維持した。次いでBDNF, NT-4, citicoline, VEGF120, VEGF164を最適濃度で付加し7日後に再生突起数を観察した。観察後網膜切片を固定し凍結切片を作成、TUNEL染色およびcaspase-9, caspase-3の免疫染色を施行した。GCLにおけるTUNEL陽性率,caspase-9, caspase-3の免疫活性陽性率を解析した。その結果、正常濃度グルコース群に比べ高濃度グルコース群では再生突起数は有意に減少しTUNEL陽性率は有意に増加した。また、caspase-9, caspase-3の免疫活性も有意に増加した。BDNF, NT-4, citicolineを付加した群ではTUNEL陽性率は有意に減少し、再生突起数は有意に増加した。また、capsae-9, caspase-3の免疫活性も有意に減少した。VEGF120, VEGF164を付加した群ではTUNEL陽性率は改善したが再生突起数の増加は得られなかった。 以上の結果から、高濃度グルコースはバイオケミカルなinjuryとしてcaspase-9, caspase-3の活性化を介して網膜神経細胞に細胞死を誘導し、再生突起数を減少させることが示唆された。BDNF, NT-4, citicolineはcaspase-9, caspase-3の活性化を抑制することで再生突起数を減少させ細胞死を救済することが示唆された。 高濃度グルコースで活性化されるcaspase-9, caspase-3は人糖尿病網膜の神経病変においても同様に観察された現象であり、本実験の細胞死のメカニズムは部分的には人糖尿病網膜で見られる神経病変に共通する。本研究ではBDNFよりもNT-4のほうが救済効果や再生誘導に優れていた傾向が見られた。また、citicolineは救済効果はBDNF,NT-4に劣っても臨床上の安全面が確立されている薬剤であり、糖尿病網膜症の臨床応用に大きなアドバンテージがあると思われた。
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