研究概要 |
研究の目的: 様々な平滑筋組織においてtetrodotoxin感受性の活動電位が記録されることから電位依存性Na^+チャネルの存在が示唆されてきたが、そのNa^+チャネルの分子実体についてはこれまで全く不明のままであった。我々は様々な分子生物学的および電気生理学的手法を用いてマウス輸精管平滑筋におけるNaVチャネルの主要構造を成すαサブユニットタンパク質はScn8aにてコードされるNaV1.6であると報告した(Zhu et al. Biophyscal Journal, 94 : 3340-3351, 2008)。本研究では平滑筋型Na^+チャネルであるNaV1.6チャネルタンパク質をコードするScn8a遺伝子欠損マウス(NaV1.6^<-/->マウス)とその野生型マウス(NaV1.6^<+/+>マウス)を用いて分子遺伝学観点から平滑筋型Na^+チャネルの生理学的役割を明らかにし、その分子実体を同定することを研究目的とした。 研究実施内容: NaV1.6^<+/+>マウスにおける輸精管平滑筋単離細胞において電位依存性Na^+電流は観察されたが、一方でNaV1.6^<-/->マウス輸精管平滑筋細胞ではNa^+電流は全く記録されなかった(Zhu et al. British Journal of Pharmacology, 157 : 1483-1493, 2009)。またβサブユニットに関してはScn1bのみが遺伝子レベルで検出された(Zhu et al. Journal of Cellular Physiology, 233 : 234-243, 2010)。以上の結果から平滑筋型NaVチャネルの分子実体はNaV1.6から成るαサブユニットタンパク質とScn1bにてコードされるβサブユニットタンパク質の2つの異なるサブユニットタンパク質から構成される可能性が強いことが示唆された。
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