【研究目的】 設備に乏しく、かつ多人数の履修者がいる環境であっても、生徒のコミュニケーション能力を効率的に養うことが可能である中国語の教授法について、とくにリスニング教育を取りあげて具体的な方法論を探る。 リスニング教育を特に対象とした理由は、1、インプット理論の観点からリスニングは外国語の力の根本と考えられていること、2、多人数大規模教室においても導入が比較的容易であること、の2点である。 【研究方法】 研究代表者が2005年度から授業で実践していた方法を基礎とし、さらに他の外国語教授法および第二言語習得理論研究の成果を参考として、検討・修正を加え、多人数大規模教室での導入によりふさわしい教授法を開発する。開発した教授法の教育効果についても、学習者に対してテストを行い確認・検証する。 【研究成果】 具体的には、次のような教授法を開発した。まず教材については、以下の(1)~(4)の4種類を用意する。 (1)音声教材(発話速度の違うもの2種類)、(2)文字教材((1)を文字に起こしたもの。全文記載と語彙の50~70%が空欄になっているものの2種)、(3)単語帳((1)の新出単語・重要単語を抽出)、(4)単語テスト((3)から抽出して作成)。 実際の授業は、以下のI~VIIIの8つのプロセスに沿って行う。 I:教材(4)を事前配布し、予習させる、II:教材(1)を聴いて内容把握、III:教材(1)を聴きつつ教材(2)を用いてクローズテスト、IV:答案を学習者相互で採点・確認、V:意味の確認、VI:発音練習、VII:I~VIを2回繰り返したあと、教材(4)を用いて単語テスト(聞き取り)、VIII:教材(1)を用いてシャドーイング。 以上の方法で授業を行い、学生に効果をテストによって実験したところ、わずか3ヶ月で正答率の平均が飛躍的に上昇し、高い教育的効果があげられたことが確認できた。
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