【研究目的】 本研究では、日本の大学における教務担当職員の新たな役割の実際を調査・分析し、当該役割の一般化を試みる。 【研究方法】 2007年の上西・中井・齋藤の調査からは、教務担当職員の継続従事年数が長いか、関連部門内を異動する機関・組織において「ゼネラリスト志向」ではなく専門性についての萌芽があると仮定できた。このため、当該機関・組織の教務事務責任者に対して業務内容、知識・技能等にっいて、教員との役割分担を視野にいれたインタビューを実施する。 【研究成果】 教務担当職員の継続従事年数が長いか、関連部門内を異動する機関・組織の教務事務責任者からは、1)大学教育改革にはベテランの教務担当職員が必要である、2)ベテランの教務担当職員とは、卒業要件等照合、関係法令確認、教務データ管理、講義室等施設・設備管理等の業務に熟知していて、それを卒なくこなし、後輩に指導ができる人である、3)教務担当課長に教務経験のない者がなるのは関連知識・スキルがないためむずかしく、なった場合、本人が大変苦労し、大学にとっても研修コストや業務低下等のリスクが増すと指摘された。このことからは、当該教務事務責任者は大学職員の「専門」の一分野として教務事務をとらえているということができる。つまり、教務担当職員が従来行ってきた教員支援業務としての教務事務について、大学職員の「専門」の一分野として捉えなおし、教職協働における教務担当職員の"新たな"役割と位置づけることができるのではなかろうか。 今後は、「専門」としての教務事務の確立のため、体系的に編まれた教務事務の標準テキストの作成が必要となるう。
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