「教育現場」の認知心理学の成果の適応が進まない背景には、教師の持つ「学習」に対する素朴概念の存在が影響しているのではないかとの仮説から研究を進めてきたが、教師のドリル的な学習方法選択には明らかにその関与が認められた。しかも、年代に関係なくベテラン層から初任層まで、「学習」の基本は繰り返しを基本とするドリル的な学習であるという概念が根強く存在していることが分かった。これまで、いくつかの教材の素朴概念については学習者レベルで明らかにされてきているが、教師の「学習」そのものへの素朴概念の存在を明らかにできたことにより、次のような提案が可能になった。(1)安易にドリル的な学習スタイルを選択しない。(2)課題によって学習スタイルを選択する。(3)「できない子」への対応をドリル的な学習で行わない。又、提案の前提として、教員養成の過程や現場の研修の中で「学習」という現象についての理解を深めるための手立てが必要なことも分かった。多くの学習者がドリル的な学習を強いられている現状を踏まえて、教師の「学習」に対する認識をどのように形成、変更させていけるかが今後の課題として残っている。
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