J.Schlaichが発案したソーラーチムニーは透光性の集熱部で太陽熱を集め、中央部に設置した煙突状の構造体内部に誘起された熱上昇風によって発電を行うシステムである。このシステムは太陽エネルギーが豊富で、広大な土地利用が可能な砂漠地域に特に適しており、砂漠化が環境問題として深刻になるなか、このような不毛の地域における有効なエネルギーの供給システムとして期待される。 本研究の目的は風を創りだす煙突型集風構造体の縮尺モデルを用いた室内実験を行い、集風体内部に誘起される熱上昇流に関する様々な基礎データを収集することである。さらに、実験により得られた知見から、発電機設置部に相当する集風体下層部における上昇流の効果的な集風手法について検討する。 本年度は、その第一段階として集風体モデル内部の流れの観察と上昇流の速度計測の検討を行った。流れの観察では煙を用いた可視化を行い、煙突内に誘起される上昇流の存在を確認した。上昇流の速度計測ではPIV計測、LDV計測、熱線流速計による計測を試みた。それぞれの手法の特徴を考察し、管内(煙突内)の流れ計測に対する適用性について検討した。 PIV計測は可視化技術を利用した計測法であり、流れを直接計測できる利点はあるが、トレーサの選定が難しい。煙をトレーサとした計測では解析ソフトが濃度パターンを追跡するアルゴリズムであるため、煙の濃度分布の関係から適切な解析が行われる場合と、そうでない場合が生じた。LDV計測はレーザードップラー流速計を用いた手法である。本手法はモデルの製作において、レーザーの屈折が生じない材料の選定が必要であることが分かった。熱線流速計による計測は、プローブ出力校正を必要とする煩雑さはあるが、この手法の計測結果は、適切な解析が行われたPIVの結果とよく一致した。また、これらの結果は、同時に行った数値解析の結果とも一致しており、今後の速度計測では熱線流速計による手法を採用する予定である。
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