研究概要 |
植物は光合成で光エネルギーを利用して二酸化炭素を吸収し、蒸散で大気中の熱エネルギーを吸収する。この優れた働きに注目し、ポトス(Epipremnum aureum)を用いて閉鎖空間内で植物有無によるバイオエアコン機能を調べた。厚さ25mmの断熱材で覆ったガラス容器(425×272×285mm)を恒温器(600×477×1000mm)に2つ入れ、両方に土壌が入ったプランターを入れ、片方でポトスを栽培した。白色発光ダイオードで12時間(6~18時)照射し、熱電対で10分毎2日間の温度と湿度を計測した。恒温器内温度を10,16,23,30,35℃に保ち、2日間2つの容器の温度差を比べてポトス有無による冷房効果を調べた。23℃の温度差が約1℃で最も大きく安定した結果であり、23℃より高温や低温になるほど冷房効果が低かった。10,35℃は不安定な結果であり、特に高温になるほど冷房効果が低かった。冷房効果における光合成の影響を調べるため、恒温器内温度を23℃に保ち、白色発光ダイオードで12時間(6~18時)照射、24時間照射、照射なしの3つの条件の実験を2日間行い、容器内のポトス有無による二酸化炭素濃度の変化を調べた。3つの条件で違いが現れたが、加えて酸素濃度を測定することでより正確な結果が得られるので今後実施したい。野外における植物のバイオエアコン機能を調べるため、2つの大型プランター(イネ有無)の上部(地上1.3m)温湿度を計測した。7,8,9月の温度の結果を比較すると、8月の昼間にイネの冷房効果が高く、8月の夜間に最も低いことがわかった。今後水温、地温、光強度を同時に測定して詳しく解析したい。これらの研究を応用して、植物のはたらきと環境問題というテーマで、光合成と蒸散と熱エネルギーの関係を理解できる中学校3年理科授業を実践した。また、ポトスの葉の表裏・葉柄・茎の表皮、葉の断面を顕微鏡で観察し、気孔を撮影できたので教材化する試みを推進したい。
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