研究概要 |
(緒言)ブドウの市場評価は,着色の良否が重要である.しかし,本学農場のある高槻では夏季の気温,特に夜温が高く昼夜温の日較差が小さいため,'巨峰'等,着色系ブドウ品種の着色が悪い.本農場ではこれまで草生栽培でブドウ栽培を行ってきたが,これに代えて清耕栽培を行った方が日中の気温は上がりやすく,夜間の気温は下がりやすくなり,昼夜温の日較差が大きくなって着色に有利に働くのではないかと考えた.さらに,土壌表面が露出している清耕区は草生区に比べて土壌が乾燥しやすく,水分ストレスが加わることで着色に有利に働くのではないかと考えた. (材料および方法)2009年4月18日より,高槻農場で草生栽培区と清耕栽培区の2区を設け,両区内でそれぞれ栽培している8年生の'巨峰','高墨','ダークリッジ'を供試した.両区の日最高気温,日最低気温,日平均気温,気温日較差,地下20cmのpF値について,開花期(5月下旬)から収穫期(8月下旬)まで調査した.8月27日にすべての品種を収穫し,果房重,果粒数,果皮色,糖度,果粒重,果粒縦径,果粒横径を調査した. (結果および考察)ブドウの着色に重要な着色開始期から着色旺盛期の圃場環境は実験のねらいに反し草生区の方が最低気温,気温日較差とも着色に有利な条件になったが,カラーチャート値は'巨峰','ダークリッジ'においては清耕区の方が有意に高い値となった.したがって,その原因を明らかにすることはできなかったが,清耕栽培は高槻のような西南暖地の気温条件下でも'巨峰','ダークリッジ'の着色不良の改善に有効な栽培方法である可能性が示唆された.しかし,果粒重はいずれの品種も清耕区で低い値となっており,特に,'ダークリッジ'ではその差が1.5gとやや大きく,この点については改善する必要がある.
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