【背景・目的】 クロバザム(CLB)は、既存のベンゾジアゼピン系薬剤に比べ、広い抗てんかん作用をもつことから難治てんかん患者を中心に様々な発作型の薬物治療に用いられている。 我々は、成人難治性てんかん患者におけるN-CLBとCLBの血中濃度比の個体間変動がCYP2C19遺伝子多型と関連していることを報告しているが、治療域を含めた体内動態に関する詳細な報告やCYP2C19遺伝子多型と臨床効果および副作用などの薬物治療についての報告はほとんどない。 そこで、CLB服用患者におけるCLB体内動態とCYP2C19遺伝子多型による臨床効果の関係について検討し、評価することを目的とした。 【研究方法】 京大病院でCLBを服用している患者23名を対象に、CLBおよびN-CLB血中濃度測定値を収集した。また、PCR-RFLP法によりCYP2C19の遺伝子解析を行い、CLBの体内動態や臨床効果との関係について検討した。 【研究成果】 CYP2C19遺伝子多型においてホモ変異型の場合、野生型の場合と比べ、CLB投与量は約半分、N-CLB血中濃度は約2倍、N-CLB/CLB血中濃度比は約3倍と遺伝子型により大きく異なった。また、野生型を有する患者の発作消失が0名だったのに対し、ホモ変異型を有する患者では発作消失が4名と有意な発作の抑制効果がみられたことから、ホモ変異型を有する場合、低用量で有効な治療効果を得られることが示された。 以上の結果より、成人難治性てんかん患者においてCYP2C19遺伝子多型が低用量CLB治療におけるN-CLB血中濃度および有効性と関連していることを明らかとした。 現在、CLB導入前の患者を対象に遺伝子解析を行い、低用量で効果の期待できる患者にCLB治療を選択するといった個別化医療への応用へむけた前方視的な検討を行っている。
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