5-フルオロウラシル(5-FU)と放射線を併用する化学放射線療法は頭頸部癌に広く用いられているが、口腔粘膜や唾液中に産生されるフリーラジカルによる口内炎は高頻度に発症し、患者QOLを著しく低下させる。これまでに、フリーラジカル除去作用をもつアロプリノール含嗽液が、口内炎予防に有用であることが報告されているが、アロプリノールは腎機能低下者には減量する必要がある。最近、レバミピド(ムコスタ[○!R])含嗽液は、ドセタキセルと放射線療法を併用した患者の口内炎を改善したことが報告されており、腎機能低下者に対しても安全に使用できることから、アロプリノール含漱液に替わる治療法として注目されている。 本研究では、レバミピド含嗽水を安全に使用するための準備として、調製に必要となるイナゲル[○!R](伊那食品)とアルコックスE-30[○!R](明成化学)について調査を行った。イナゲル[○!R]は寒天食品であり、デザートや和菓子に幅広く用いられている食品添加物であることから、外用薬として使用可能である。しかしながら、アルコックスE-30はポリエチレンオキサイドの水溶性熱加熱性樹脂であり、取り扱い時には皮膚粘膜への付着や飛散に注意が必要であることが判明したため、院内製剤としてヒトへの適用は困難と考えられた。そのため、アロプリノール含嗽水調製時に使用しているカルメロースナトリウムを基剤として用いるのが適当と考えられた。また、他施設での使用状況を調査した結果、レバミピド含嗽水は苦みが強いことが判明した。そこで、各種経腸栄養剤のフレーバーを添加して苦みをマスクできるかどうかを試験したところ、酸味のあるパイナップルおよびオレンジフレーバーはレバミピド含嗽水の苦みを緩和するのに適当であった。今後、作製したレバミピド含嗽水を5-FUと放射線療法を併用する患者に適用して、有用性を検証する予定である。
|