研究課題
奨励研究
臨床では複数の点眼薬を併用する場合が多いにも関わらず、点眼薬併用時の眼組織膜への障害性に関する系統的な研究は少なく、安全性についての合理的な情報はほとんどない。そのため、臨床における市販点眼薬使用時の角膜障害性を予測・評価することに加え、点眼薬併用時の眼組織への障害性を低減できる処方・製剤設計の検討は重要である。本研究では、ヒトの涙のターンオーバーを再現した系として、電気生理学的実験法を考案し、角膜電気抵抗値を指標として、臨床での点眼薬適用時の各種成分をスクリーニングした。臨床において、緑内障は、長期の点眼治療が必要となる場合が多く、安全に使用していくことは重要となる。そこで、本研究では、抗緑内障点眼薬を用いて、原因となる物質の同定やtight junctionを中心とした作用機構を調べた。その結果、保存剤であるベンザルコニウム塩酸塩(benzalkonium chloride;BAC)濃度が角膜電気抵抗値に大きく影響し、低濃度の場合には主成分の種類にも影響されることを明らかにした。また、2種類の抗緑内障点眼薬を併用する場合、点眼順序を考慮することで、角膜障害を低減できることが示唆された。さらに、角膜保護点眼薬(精製ヒアルロン酸ナトリウム点眼液、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム点眼液)を先行して使用することで、抗緑内障点眼薬による角膜障害が改善できることが確認された。本研究は、臨床と基礎研究を結ぶリサーチであり、点眼剤を併用する場合、点眼順序や角膜保護点眼薬の併用が、有害事象低減に有用な処方・製剤設計に繋がることを示唆しており、今後より詳細な検討は必要ではあるものの、重要な知見を得ることができた。`
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Biol Pharm Bull. 33
ページ: 107-110
長崎県病院薬剤師会雑誌 84
ページ: 51-52