研究概要 |
イオン性毒物の事件等に迅速対応するため、以前考案した薄層クロマトグラフィー(TLC)によるアニオン検出法をカチオン(Li, Na, Mg, AI, K, Ca, Rb, Sr, Cd, Cs, Ba, Hg, T1及びPbの計14種類)もスクリーニング法として応用可能か検討した。 1.TLCプレートの選択と展開溶媒(DS)の検討 プレートにシリカゲル(S)、セルロース(C)等、DSでは添加する酸として四種検討した。その結果、Cプレート並びに硝酸を加えたDSを用い、Li, Na, Mg, K, Ca, Rb, Sr, Cs, Ba, T1及びPbが検出可能であった。 2.Rf値並びに検出限界 確定したDSは4系統で、メタノール-2M硝酸(3:1,v/v)が最も分離出来たが、どのDSを用いても検出可能なカチオンの完全分離は出来なかった。検出限界は0.1-10μgで、1族>>2族>13族=14族の感度差がみられた。 3.擬似サンプルへの応用 緑茶(J)、紅茶(T)、ドリップコーヒー(D)にT1_2SO_4若しくはNaAsO_2を添加・回収した抽出物についてTLCを行った。なお、J、Tは各1mg/mL、Dは1、2及び5mg/mLに濃度調整した。各溶液1mLについて、(1)メンブランフィルター(MF)による濾過のみ、(2)MF濾過後C18固層カラムによる抽出、(3)MF濾過後イオン交換固層カラムによる抽出で検討した結果、(2)において2系統のDSを用いると妨害成分の影響を受けずCでは目的のT1、Na並びにSではSO_4、AsO_2を検出出来たが、DではSO_4は検出されなかった。 4.機器分析への応用 TLC後、3%硝酸溶液でイオンを抽出し、MFで濾過後にICP-MSへ応用した。Na、K及びT1、並びに亜ヒ酸由来のAsが検出可能であった。よって、本法はイオンのスクリーニングのみならず試料精製法として機器分析への応用も可能であると考える。
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