【目的】 医薬品を粉砕し患者に投与する際に、服用感の増悪による服薬コンプライアンスの低下や服薬拒否が問題となる。粉砕末の味が一定の指標を持って評価されている品目はごくわずかであり、医薬品の粉砕調剤による投与が服薬コンプライアンスに及ぼす影響は十分に検討されていないのが現状である。そこで本研究は、粉砕調剤を行った医薬品の味を評価し、服薬コンプライアンスと患者のQOLの向上に貢献することを目的とした。 【方法】 先発品のアンジオテンシン変換酵素阻害薬(12品目)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(6品目)、HMG-CoA還元酵素阻害薬(6品目)を対象医薬品とし、粉砕末の苦味を評価する自主臨床試験を実施した。被験者は本試験への参加について同意の得られた者で、正常な味覚判定能力を有すると判断された者とした。苦味試験は二重盲検法で行い、1品目あたり0.1錠分の粉砕末を口腔内に含み、苦味をVAS(visual analogue scale)により数値化した。苦味試験の標準物質には塩酸キニーネ末(0.001%、0.1%、0.5%、10%)を用いた。 【成果】 自主臨床試験には30名の被験者が参加し、うち1名が脱落したため29名(男13名、女16名)が苦味試験の対象者となった。苦味試験の結果、対象医薬品を「服用には問題ない」、「強い苦みを感じ服用に苦痛を伴う」、「苦味が強く服用は困難」に分類することができた。特に、「苦味が強く服用は困難」と評価された10%塩酸キニーネ末と同等の苦味を示した医薬品はリピトール錠(アトルバスタチン)、ローコール錠(フルバスタチン)、ニューロタン錠(ロサルタン)であった。 本研究により、粉砕末の苦味の程度が数値化され、比較可能となった。以上より、服薬困難時における同種薬間での代替薬の提案が可能となり、服薬コンプライアンスおよび患者のQOLの向上に貢献できると考えられた。
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