肥満・糖尿病の原因として糖・脂質代謝異常があげられる。肥満・糖尿病の発症過程において各臓器の糖・脂質代謝変化を測定することは、肥満・糖尿病の発症メカニズム、治療法の開発に重要である。現在、各臓器の代謝変化をin vivoで解析するには、放射性化合物を用いた方法で行い、特別な実験施設を必要とする。そこで、この問題に対処するため、非放射性試薬(non-RI)による糖・脂質代謝測定法の開発を行っている。 最近の研究で、脂肪酸合成系の一分子であるアシルCoAが摂食や代謝調節に関わるという報告があり、本研究では、この摂食の鍵分子であるアシルCoAのnon-RIによる微量測定法の開発を行った。測定は、酵素反応を利用し、酵素反応による反応産物を測定した。試料中のアシルCoAをアシルCoAオキシダーゼで酸化し、過酸化水素(H_2O_2)を生成する。そのH_2O_2をペルオキシダーゼと作用させ、比色にて定量した。さらにこの測定系で、アシルCoAシンセターゼを用いることにより脂肪酸量を測定でき、測定した脂肪酸量から内因性のアシルCoA量を差し引くことで試料中の脂肪酸量を算出することにした。最初に酵素反応系の至適条件の検討を行い、脂肪酸、アシルCoA(Palmitoyl-CoA)の標準直線を作成した。次に組織からの脂肪酸、アシルCoAの抽出方法及び測定条件の検討を行った。組織蛋白量約1mgの試料より、non-RIでアシルCoA量の測定を可能にした。しかし、測定に高濃度(約1mg蛋白)の組織量を要するため、バックグラウンドが上昇する傾向にある。そこで現在、バックグラウンドを下げるため、内因性物質由来の酵素反応を除く方法を検討し、より少ない組織量での測定を可能にするため、さらなる改良を行っている。
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