研究目的; 医療関連感染の原因菌としてextended-spectrum β-lactamase(ESBL)やmetallo β-lactamase(MBL)などのプラスミド性DNAを保持する多剤耐性菌の蔓延が憂慮されている。これらの耐性菌を簡便かつ確実に検出する術を確立するため、薬剤感受性による表現型および遺伝子型のタイピングを行った。 研究方法; 表現型の確認はMicroScan WalkAway(Neg Comb 6.11Jパネル、ESBLコンファメーションパネル)、SAM diskを用いた。遺伝子型タイピングはMultiplex PCR法を用いてCTX-M1、CTX-M2、CTX-M9、TEM、SHV、IMP-1、IMP-2〓M-2グループの8型に大別した。 研究成果; 解析に用いた141株中、ESBLが71株(CTX-M1:26株、CTX-M2:12株、CTX-M9:34株、TEM:16株、SHV:27株)、MBLが57株(IMP-1:24株、IMP-2:0株、VIM-2:0株)、耐性遺伝子不明株が13株であった。ESBLにおいては2つ以上の耐性遺伝子を保有している株が41株あった。MBLの中には、カルバペネム系薬に感性を示す非典型株が5株存在した。 非典型株の遺伝子型の解析を行ったところMBLの中で最も多くの割合を占めるbla_<IMP-1>をプラスミド上に保有していた。非典型的パターンとなった原因については更なる解析が必要であるが、検出のポイントは明らかとなった。これらの株を見逃さないためには「imipenemのMICが若干上昇且つ広域セファロスポリン系薬に耐性を示す」という点に注意する必要がある。また、KPC等のカルバペネマーゼの検出に有用とされているModified Hodge testが、本分離株の確認試験においても有用であることが分かった。
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