今回、フィブリノゲン異常症のMatsulnoto I(γ Asp364His)、Matsumoto II(γ Asn308Lys)、Matsumoto III(γ Arg275Cys)の3例について、フィブリノゲンが関与する血小板機能である血小板凝集能と血小板退縮能について、リコンビナントフィブリノゲンを作成して検討を行った。血小板凝集能について正常フィブリノゲンで反応条件を決定した。条件決定後、リコンビナントフィブリノゲンで解析を行ったが、同じ条件下でもリコンビナントでは凝集が起こらなかった。何度か条件を変えて検討したがうまくいかず、原因究明中である。血小板退縮能については、計画調書ではキュベット内にフィブリノゲンと洗浄血小板浮遊液をあらかじめ37℃10分間反応させた後、トロンビンを加えてクロットを形成させ、その後氷冷し退縮の様子を観察するとした。しかし、この方法で行ってみると、氷冷後にキュベットに水滴がついてしまい、うまく写真に撮ることができなかった。そこで、すべて室温で反応を行ったところ、うまく観察することができた。実際に3例のリコンビナントフィブリノゲンについて解析したところ、正常ではトロンビン添加後、すぐに凝集が始まりクロットを形成した。15分後から視覚的に確認できる退縮が始まり、45分後には完全に退縮した。Matsumoto IIはトロンビン添加後、3分ほどで凝集が始まり、クロットを形成した。20分後から視覚的に分かる退縮が始まり、その後ゆっくり進行し24時間後に正常と同じ程度まで退縮した。Matsumoto IとMatsumoto IIIでは実験終了の24時間後まで明らかな凝集が起こらず、退縮も観察されなかった。また、血小板凝集が起こるまでの時間が長いと浮遊していた血小板が沈殿してくるという問題点が浮かんできた。これでは正常と比べて時間がかかるということは分かるが、正確に観察することが難しく、改善しなければならないことが分かった。現在、血小板退縮のメカニズムは詳細に解明されておらず、異常フィブリノゲンと血小板の関係からアプローチして、少しずつ明らかにできたらと考えている。
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