研究概要 |
[目的] 膀胱癌は、泌尿器科領域中で最も頻度が高く臨床的に重要な疾患である。本研究は、尿路上皮の悪性転化に早期に働くといわれているp16^<INK4a>の過剰発現に注目した。次に、多くの悪性腫瘍で認められるp53蛋白の異常蓄積にも研究対象を広げ、尿中p16^<INK4a>およびp53蛋白の検出を試み、尿路上皮癌の新しい検出法を確立していく。 [方法] まず尿細胞診116例および膀胱組織190例につき、p16^<INK4a>抗体を用い免疫組織細胞化学的検討を行った。次に異型細胞の検出された尿検体30例を収集し、このうちp16^<INK4a>およびp53の過剰発現がみられた症例3例について、Minikon B15を用い尿の濃縮を行い30倍、50倍、100倍の濃縮尿を作成した。さらにp53 Enzyme Immunometric assay Kitにて、濃縮尿中のp53蛋白定量を行った。 [結果] 細胞診材料では、p16^<INK4a>の過剰発現が良性異型(0%)、良悪性鑑別困難(16%)、悪性疑いおよび悪性(47%)に認められた。組織材料のp16^<INK4a>発現は、正常(0%)、異形成および癌例(48%)に過剰発現がみられた。組織型では尿路上皮内癌(70%)が最も高率であった。細胞診と組織材料が共に得られた症例では、両者は高い一致率(76%)を示した。以上、p16^<INK4a>の発現は尿路上皮内癌やhigh gradeの尿路上皮癌で高率であり、悪性度の高い尿路上皮癌の発見にp16^<INK4a>は有用であると実証できた。以上の内容でAmerican journal of clinical pathology, 2009 ;132:776-784に掲載された。 また、濃縮尿中のp53蛋白定量の結果は、尿中異型細胞および膀胱腫瘍組織にp53蛋白の過剰発現が認められた症例にも関わらず、濃縮尿中にp53蛋白の定量は、0pg以下となり定量が出来なかった。
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