研究目的:末梢血液中の循環中皮腫細胞を検出することにより、悪性胸膜中皮腫の早期発見・治療効果判定に役立てることを目的とした。 研究方法:(1)血液中の循環腫瘍細胞(CTC : Circulating Tumor Cell)検出システムであるCellSearchのCTC検出能を確認し、中皮腫の診断マーカーとしての有用性を検討、検出方法の改良を試みた。 (2)中皮腫細胞に対する、より特異的なその他の検出法を検討した。 研究成果: <CellSearchのCTC検出能の検討> ・CellSearchによる悪性胸膜中皮腫症例のCTC検出率 悪性胸膜中皮腫と非悪性疾患におけるCTC陽性率(CTC>1)はそれぞれ32%、23%であった。 ・悪性胸膜中皮腫におけるCTCの診断マーカーとしての検討 ROC曲線による解析では、CTCは非悪性疾患との鑑別に有用であるとはいえなかった。 結果として転移が認められない早期の症例に対してセルサーチによるCTCの検出率は低く、診断マーカーとしては感度が不十分であると考えられた。そこで、性質の異なる中皮腫細胞に対して1つの抗原をターゲットにして循環中皮腫細胞を捕捉するのでなく、遺伝子発現による検出方法の検討を行った。 <遺伝子発現による検出法の検討> 末梢血より腫瘍細胞が含まれる単核球層を分取し、この分画で発現しているRNAを抽出後RT-PCRにより遺伝子発現を確認した。中皮腫のマーカーとしてmesothelinの発現を検討した。 まず中皮腫細胞株における解析では3株中全ての株にmesothelinが発現し、更にその感度は末梢血8mLあたり10個まで検出可能であった。早期の悪性胸膜中皮腫症例の末梢血ではmesothelinの発現は確認できなかったが、今後、複数のマーカーを組み合わせて感度を向上させられる可能性があり、新しい検出法として有用であると考えられた。
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