研究概要 |
「環境の学習」といえば,科学的な内容がわかりにくいうえに,「情勢はだんだん悪くなっていく」という話が多い。そのため、たいていの場合重苦しい雰囲気になる。これまでのような学習の流れには,生徒が生態系を学ぶことと環境保全について考えることにつながりがないために,環境保全の学習が説教になって,「ああやっぱり環境問題を解決できそうにない」と感じてしまう。それは,生態系を学習するための観察実験と環境調査とでは全く別の対象を扱い,それぞれ違う方法でおこなっていたからである。2つの学習の間には直接の接点がなく,それが障害となって,自然と人間とのかかわり方について相互に見たり考えたりできるような学習になっていないからである。そこで、本研究では,子どもたちにとって本来一番身近な存在であるはずの琵琶湖に愛着を感じ、琵琶湖と共存するために必要なことを考えられるような学習について研究を進めた。 研究として,既存の単元「生物どうしのつながり」の中で扱う食物連鎖や物質の循環を琵琶湖を中心とした視点から取り上げた。 実際の単元構成については大きく以下の流れで進めた。 (1)琵琶湖に住む生物の多様性を理解する。(2)生物相互のつながりがあることを理解する。(3)人と琵琶湖、人と生物のつながりを理解する。(4)琵琶湖の抱える環境問題について理解する。(5)琵琶湖と私たちの暮らしについて考える。 本実践を終えた後のアンケートでは、7割の生徒が「琵琶湖の環境問題について関心が高まった。」と答えた。ミニ琵琶湖や低酸素化の実験を行ったことで、自分たちの生活が琵琶湖の環境に与える影響をより身近に感じ取ったようで、「たった1滴の排水が、あんなにも水質を変化させるとは思わなかった。」「琵琶湖の環境悪化させる一人になる可能性があることが分かった。」などの意見を持つ生徒が見られた。 また、生物相互のつながりやその多様性について、琵琶湖を題材として扱ったことについて、「琵琶湖の中にあんなにたくさんの魚やプランクトンがいるとは思わなかった。」「琵琶湖の中の生物がお互いにつながりあって生きていることが分かった。」「外来魚などが問題になっているが、私たちの生活の影響によってもたくさんの生物に影響が出ることが分かった。」「自分たち以外にもたくさんの生物が生きていることを改めて感じた。」などといった意見が多く見られ、『琵琶湖』とい環境が生徒にとって「守りたい」と感じる自然の1つになったのではないかと感じる。 この実践を通して身につけさせたい力は、評価が難しく、子どもたちの中にどのように根付いているかが十分に把握できない。子どもたちが将来、滋賀を担う存在になったときに、この実践の持つ意味が問われるのだろう。滋賀の環境教育を考えるにあたり、水環境だけでじゅうぶん満足できるとは思わない。今後、さらに深まりのある環境教育を目指して、森林、里山、土壌、田園…いろいろな要素を取り込んだ環境教育のプログラムを開発していきたい。
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