近年、カタログ販売やインターネット販売等を通して購入する方法が普及してきている。テキスタイル製品においても、従来の消費者が店舗に足を運び、実際に製品を見たり触れてから購入するという形だけではなく、モニター上や印刷された製品の画像を見て判断をしている。テキスタイル製品の重要な要素である風合いや質感は、本来、視覚、触覚によって総合的に判断するものであるが、カタログやネット販売においては、視覚のみで判断せざるをえない。 そこで、本研究は、消費者目線でのテキスタイル製品の視覚と触覚での風合い・質感の違い、さらに照明環境による見た目の風合い・質感の違いについて検討を行った。まず始めに、一般消費者に使用されている風合い・質感を表現する感覚語を収集するためにアンケート調査を行った。多種多様の言葉が挙げられたが、さらさら感、ざらざら感、硬さ感、柔らか感、光沢感、艶感、暖かさ感、冷たさ感について、1.視覚と触覚の差を評価する官能検査、2.照明環境の影響を検討するために、3種の照明条件下、2種の布の提示形状で、視覚による評価を行った。評価には、白色の綿、麻、絹、ポリエステル、ウール、ナイロンなど様々な素材、織のサンプルを用いた。結果、さらさら感、ざらざら感、硬さ感、柔らか感など触覚により関連すると考えられる感覚に対しては、3割程度の被験者が視覚と触覚の間に差があると判断した(有意水準5%)。また、もっとも風合い・質感が表現される照明条件は、感覚語やサンプルによって異なるということが明らかになった。これらの結果から、カタログやネットで製品情報を伝達するには、様々な条件で撮影された画像を用いることによって、消費者が風合い・質感を判断する手助けになるのではないかと考える。また、特に触覚が重要視される風合い・質感の画像での伝達は困難であり、画像以外にも何か指標となるものが必要ではないかと思われる。
|