研究課題/領域番号 |
21H00468
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 神奈川大学 (2023) 芝浦工業大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
小出 泰士 神奈川大学, 国際日本学部, 講師 (30407225)
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研究分担者 |
浅見 昇吾 上智大学, 外国語学部, 教授 (10384158)
秋葉 悦子 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (20262488)
盛永 審一郎 公立小松大学, サステイナブルシステム科学研究科, 特任教授 (30099767)
松田 純 静岡大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (30125679)
小林 真紀 愛知大学, 法学部, 教授 (60350930)
本田 まり (眞鍋まり) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60384161)
香川 知晶 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (70224342)
横野 恵 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80339663)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 教授 (80372366)
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
奥田 純一郎 上智大学, 法学部, 教授 (90349019)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | 生命倫理 / 生命法 / 医療倫理 / 倫理学 / 医事法 / 終末期医療 / ヒト胚研究 / ゲノム編集技術 / 比較思想研究 / 比較法研究 / 自殺幇助 / 安楽死 / 生殖補助医療 / 統合性 / 傷つきやすさ / 人間の尊厳 / 価値観の多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
今日グローバル化の進展により、生物医学分野における情報や技術は瞬く間に世界に普及することから、一方では、世界規模での普遍的な倫理規制が求められている。ある技術の使用を一部の国で規制しても、他の国で規制がなければ、規制の意味はないに等しいからである。しかし他方で、生命倫理の考え方はそれぞれの国の伝統的な文化的、宗教的価値観に大きく依存している面があり、各国の多様性を尊重することが求められている。本研究は、哲学的および法学的な比較研究を通して、欧米諸国の生命倫理の基本原理や法規制を解明することで、日本の今後の生命倫理政策に役立てることを目標とする。
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研究実績の概要 |
これまで終末期医療や安楽死に関して、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スイスをはじめ、カナダ、ドイツ、アメリカなども含めて、そのの倫理政策を個別的に検討してきたが、本年度は、スペインやオーストリアも含めて、それらを俯瞰的にタイプに分けて分析にした。わが国では、安楽死についての議論は一向に進展しないが、欧米では着実に安楽死や自殺幇助を法律で容認する方向に進んでいる。その根拠としては、人間の尊厳や私生活の尊重のための医療従事者の思いやりであったり、死に関する自己決定の尊重であったりすることが明らかとなった。 また、ヒト胚の取扱いと人間の尊厳に関しても、これまで継続的に検討を重ねてきたが、本年度は、ヒト胚研究規制の出発点とも言える、イギリスのウォーノック報告書の再検討や、多能性幹細胞から生殖細胞や擬似胚を作成する研究や14日ルールの廃止の問題など、絶えず進展を続ける最先端技術に関する倫理問題の再検討を重ねた、また、オーストラリアから研究者2名を招聘し、人間の生殖細胞系列に対するゲノム編集技術やミトコンドリア置換技術など、人の遺伝子に将来的に重大な影響を及ぼす先端技術の倫理問題についても検討した。研究の推進とそれによる社会の利益と、ヒト胚の尊厳の尊重とのバランスをいかに取るべきかということについて、各国が苦慮していることがうかがえる。研究の推進を優先するか、それとも、ヒト胚の尊厳の保護を優先するかによって、各国の対応に温度差が生まれていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本共同研究は、生命倫理の様々な領域にわたって、欧米各国における多様な価値観を哲学的、法学的観点から明らかにしようとする比較研究である。生命倫理の分野が多岐にわたり、対象とする国々も多く、多様な研究を同時進行で進めているため、進捗は多少遅く見えるかもしれないが、それでも徐々に着実に欧米各国の生命倫理政策に関する分析を進め、根本にある基本的価値観を明らかにしてきている。これまでの研究から明らかとなってきたことは、欧米全体としては、より多様性の尊重へ、より自律の尊重へと進んでいることである。その点では、アメリカに抗して、公共の秩序のためにある程度個人の自由を制限してきたフランスにおいてさえ、多様化・自由化の傾向は強まっていると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
この間、コロナ対策のために欧米の研究者との直接的な共同研究は妨げられがちではあったが、その分は文献研究に重心を置くことによりカバーしてきた。来年度は最終年度であるため、これまでの研究実績を集大成した上で、再び欧米の研究者との直接的な共同研究を活発化させ、欧米諸国における比較研究をまとめる。さらに、そうした成果がわが国の生命倫理政策にいかなる意味を持ち得るのかという視点から、今後の生命倫理政策に生かせるような成果をまとめたい。
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