研究課題/領域番号 |
21H00745
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
坂爪 洋美 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (10329021)
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研究分担者 |
島貫 智行 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (40454251)
松浦 民恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (60570778)
武石 惠美子 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70361631)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | インクルーシブ・リーダーシップ / ダイバーシティ・マネジメント / 管理職 / インクルーシブリーダーシップ / リーダーシップ |
研究開始時の研究の概要 |
性別や年齢、さらには働き方において部下の多様性が高まることで、管理職のマネジメントはこれまでとは異なるものとなっていくだろう。そこで、多様な部下のマネジメントを通じて、部下の持つ力を発揮させ、職場で成果を上げることが期待される管理職に求められる行動を明らかにする。 同時に、効果的に管理職が多様な部下をマネジメントする上で、必要となる環境についても明らかにする。例えば、一般的に日本企業では、管理職が持つ人事権は限られているが、部下の多様性が高まる中、これまで以上に管理職に広い人事権を持たせることも必要ではないだろうか。このように、人事権を含めた人事制度のあり方についても検討する。
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研究実績の概要 |
当該年度に実施した研究の成果は次の2点である。まず、課長クラスの管理職を対象として、多様な部下を管理する管理職に求められるリーダーシップ行動の尺度を作成した上で、その効果を検証した。文献調査ならびにインタビュー結果の精査を通じて、多様な部下を持つ管理職に必要なリーダーシップ行動として、「ビジョンの共有」「多様性の尊重」「公平性」「傾聴 」という4つの行動次元を抽出した。そして、これら4つ行動次元からなるリーダーシップ行動尺度を開発した上で、先行研究で明らかにされている職場のダイバーシティの成果との関係を検討した。2132名の回答者のデータを分析した結果、以下の3点が明らかになった。まず、開発したリーダーシップ尺度を構成する4因子のうち、「多様性の尊重」がワークグループ・インクルージョン、協調性、創造性、働きやすさを高めること、「ビジョンの共有」「公平性」「傾聴」は、ワーク・グループ・インクルージョン、協働性、創造性を高めることが確認された。一方で、「ビジョンの共有」と「多様性の尊重」は、メンバー間のコンフリクトをも高める結果となった。さらに、多様な部下をマネジメントする際には、ビジョンを共有しつつ、部下の多様性を尊重するリーダーシップ行動が有効であることが確認された。多様な部下のマネジメントには、「ビジョンの共有」と「多様性の尊重」を中心としたリーダーシップ行動が求められるが、同時にこれらのリーダーシップ行動は必ずしも望ましい効果だけをもたらすわけではないことが確認された。 もう1つが、多様な部下を持つ管理職を対象としたインタビュー調査の実施である。ダイバーシティ推進の取組みを行っている企業に勤務し、かつ属性ならびに働き方が多様な部下をマネジメントする課長クラス8名に対してインタビューを実施した。インタビューは現在分析途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに取得したデータを用いた分析は概ね予定通りに進行し、かつ分析結果を論文として投稿できたことから、これらの点については「概ね順調に進展している」と判断する。 一方で、多様な部下をマネジメントする課長クラスを対象としたインタビュー調査の実施は、当初対面での実施を模索したこともあり、実施がずれ込んでしまった。最終的に、諸事情を考慮し、オンライン上でデプスインタビューを実施することができたが、実施時期がやや後ろ倒しになったことから、「やや遅れている」と判断せざるを得ない。 しかしながら、インタビューの実施を検討している期間に、当初予定していなかった形で、先行研究の幅を広げることができた。具体的には、本研究が対象とする課長クラスの特徴をより詳細に把握すべく、部長クラスの仕事内容やその役割についてのレビューを行い、その対比を通じて、課長クラスの役割を明らかにするレビューを行った。また、課長クラスの行動をより広く捉えるために、リーダーシップ行動に加えて管理行動に関するレビューも行った。この点については「概ね順調に進展している」と判断できる。 以上をふまえ、予定通りデータ分析を行い、論文として投稿したこと、当初の予定にはなかった先行研究のレビューを追加したことに対しては肯定的な評価をするが、インタビュー調査の実施が予定よりも遅れたことから、総合的な評価は「やや遅れている」とする。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向性として、以下の3点の実施を検討している。第一に、実施済みである8名の課長クラスの管理職を対象としたインタビュー調査の分析を進める。これまでの調査から、管理職のリーダーシップ行動の概略は明らかになりつつあるが、インタビュー結果の精査を通じて、多様な部下をマネジメントする課長クラスの管理職に求められるリーダーシップ行動の精査と再整理を行う。併せて、リーダーシップ行動の促進要因・阻害要因を明らかにする。 第二に、同一企業に所属する複数の課長職のインタビューを実施する。これまでに実施したインタビュー調査からは、管理職のリーダーシップ行動は、企業の人事制度や組織風土から大きな影響を受けていることが示唆される。そこで、同一企業に所属する複数の課長職に対してインタビューを実施し、人事制度や組織風土が与える影響を明らかにする。併せて、企業の人事部を対象としたインタビュー調査の実施を模索する。その目的は、課長クラスのリーダーシップ行動の規定要因としての人事制度の詳細を明らかにすることである。特に、現場と人事部との人事権の分担のあり方や人材育成について注目する予定である。 第三に、企業を対象として実施したアンケート調査(企業調査)の分析、ならびに部下を対象として実施したアンケート調査(部下調査)の分析を行う。管理職を対象とした調査データの分析結果から、課長クラスの管理職に求められる行動とその効果はある程度明らかになってきた。しかしながら、リーダーシップ行動の効果検証という観点からは、部下調査を用いた分析が不可欠である。併せて、管理職のリーダーシップ行動の規定要因の検討を目的として、企業調査の分析も行い、前述した企業の人事部を対象としたインタビュー調査の項目策定に反映させる。
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