研究課題/領域番号 |
21H00787
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
|
研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
花田 昌宜 (花田昌宣) 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30271456)
|
研究分担者 |
井上 ゆかり 熊本学園大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10548564)
森下 直紀 三重県立看護大学, 看護学部, 准教授 (40589644)
中地 重晴 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (50586849)
田尻 雅美 熊本学園大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70421336)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
|
キーワード | 水俣病 / 公害 / 地域社会 / 被害の経験 / レジリエンス / 被害補償 / 救済 / 地域 |
研究開始時の研究の概要 |
発生確認後60年以上経過した公害、水俣病に関して、いまだ問題が解決していないことを踏まえて、被害者/被害地域の過去と現状を社会科学的見地から検証する。 そのうえで、負の経験をプラスに転化するための公害発生地域再生の「水俣モデル」とその担い手たる当事者の主体的諸条件を明らかにすることを本研究の到達目標としている。 それを通して、水俣地域にとどまらず国内外に通用するような、水俣病被害の経験を踏まえたレジリエントな社会像が示される。
|
研究実績の概要 |
研究計画の最終年度として、研究調査の取りまとめの研究会、調査の継続、補足的追加の調査実施などに注力し、年度末までの成果の取りまとめを行った。そのために、現行の水俣病に関連して進められている被害者救済、地域振興策、自然生態系や環境汚染の全体像に関する資料を追加収集・整理し、補償・救済制度および政策の全体の構図を明らかにすることに注力した。こうした構想のもと研究の目的にしたがって、水俣地域において現地の調査を実施。この年度は以下の課題を集中的課題として進めた。 (1)不知火海沿岸地域の漁村における生業調査と健康被害調査および被害の受容およびその社会的背景を明確にする。漁民の社会的関与がレジリエンスのキーであることがわかった。 (2)生活実態と健康被害の検討をおこなった。これらについては、研究分担者の協働で実施され学的領域を超えた調査として実施。 なお、被害地住民の生活ニーズや疾病状況、医療ニーズをふまえたケアのありようと課題を、これまでの調査実施を踏まえて、さらに訪問調査による聞き取り、検診などに取り組んだ。 (3)資料収集に関しては概ね計画通りに進んだ。ただし、1973年以降の水俣病にかかる種々の訴訟の資料(特に国家賠償請求訴訟にかかる書面、証拠類、段ボール箱20個)が、本研究改革の実施母体である水俣学研究センターに、当時の代理人弁護士よりあらたに寄贈された。本研究計画の延長線上に新たな発見が予想される資料である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に照らして、概ね順調に進行している まず、生業調査、被害調査については、自宅訪問を中心とした個別ヒアリング、種々の会議等を利用した集団ヒアリングも実施することができて概ね計画通りに進んだ。ついで、被害実態調査については、社会的、法的、医療的面からの被害の実態把握に努め、そこからニース把握に向けて多くの情報と資料・材料を得ることができた。今後、これらの成果を深めて詳細に分析していく必要がありその遂行体制を構築している。 なお、資料収集とその分析に関しては、水俣病関西訴訟に実務的に関わった弁護士より多量の資料の寄贈を受けた。訴訟関連の書面や証拠類のみならず、その中には被害者個々人の医学的状況のみならず家庭状況・経済状況を示すものが多く含まれている。本学の規程やルールに基づき、個人情報管理には慎重を期し、これらの資料の整理・解析に着手したところである。新たな資料群の入手はフィールド調査をしているとままあることである。当初予定されていたものではなくかつ量的にも膨大であるが本研究に有用であると判断されるため資料の概要を検討した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究計画を通して、水俣病患者や広義の水俣病被害者らとの新たな関係が広がった。それに基づいて、従来の被害者よりははるかに広い層の人々の調査が今後可能になり、水俣病をめぐる医学的・社会学的・法的課題を更新する必要が出てきた。それにより、調査研究の新たなステップを目指していく。 それが可能になる根拠は、第一に上記「進捗状況の項」の最後で触れたが、新たな弁護士資料が持ち込まれたことである。これには訴訟上の書面や証拠類にとどまらず、ヒアリング資料、書面作成のために収集された資料を大量に含んでおり、本研究成果をさらに発展させていく知的資源である。 第二に、分担者の個々のフィールド調査を通して被害の新たなフェーズが見えてきた。それは被害者の加齢に起因するもの、地域社会の風化と馴化に起因するもの、人の移動によるものなど経過と理由は様々だが普段の経過観察が必要であり本研究チームには可能であること。 第三に本研究計画遂行と成果の公開を通して新たな世代の研究者を発掘育成していきたい。とりわけ調査対象地域である不知火海沿岸では少なからず調査がなされてきているが、地元への成果還元が十分になされていないため、研究成果を地元に還元していく作業を丁寧に行う必要がある。そこに若手世代を巻き込んで研究の広がりの土台を作りたい。それには2023年9月に開催する若手研究セミナーや2024年1月の水俣病事件研究交流集会をとおして次の世代の研究者に参加を呼びかける。(コロナ感染症の収束によって可能になった。)
|