研究課題/領域番号 |
21H00827
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
辻本 雅史 中部大学, その他の部局, 顧問 (70221413)
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研究分担者 |
楊 奕 中部大学, 現代教育学部, 准教授 (60580751)
大地 宏子 中部大学, 現代教育学部, 准教授 (80413160)
山崎 洋子 武庫川女子大学, 言語文化研究所, 嘱託研究員 (40311823)
弘田 陽介 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (60440963)
山名 淳 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (80240050)
遠藤 利彦 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (90242106)
榎本 恵理 びわこ学院大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00779449)
尾崎 博美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (10528590)
正保 正惠 福山市立大学, 教育学部, 教授 (00249583)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 親性 / 生涯発達 / 子育て / ケアリング / 養育の社会化 / 子育て支援 / 家庭科教育 / 親教育 / 社会情動的能力 / マルトリートメント |
研究開始時の研究の概要 |
子育てが社会問題化するなか、養育者に対する政治的・学術的支援はパッチワーク的なものにとどまっている。教育学や保育学は、これまで子ども研究と子育て支援でこの課題に応えてきたが、子どもや養育者をとりまく社会的視点が希薄であった。 本研究は、子どもに関わる誰もに必要な資質を、母性・父性を包摂する「親性」と捉え、「親性」獲得をすべての人の生涯発達の課題ととらえて、領域横断的研究を遂行する。 教育学・哲学・歴史学等の理論研究と、保育学・発達心理学・家政学・メディア学・脳科学などの領域研究を融合し、新たな教育学モデルを構築し、併せてその実践や社会実装に向けての方向性と基盤を提示する。
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研究実績の概要 |
2021年度は3回の研究会(8/27-28、2/13、3/20-21、オンラインを含む)、2022年度は5回の研究会を実施し(8/23-24、12/03-94、2/19-20、3/16、3/18-20)、研究協力者(友田明美)や関連の深い根ケ山光一を招き「親性」について議論した。併せて各自の研究進捗状況を報告するとともに、全体として今後の研究の内容と方向を常に確認・共有しながら研究を進めてきた。 コロナ禍で予定の海外調査が困難であったので、海外のカウンターパートとは、オンラインを通しての交流のほか、直接招聘して講演と研究会を行った。2023.2/19-20の研究会は、英国在住の教育関係者・グラント純子にイギリスの子育て支援の現状をオンラインでの講演と議論、3月には英国の著名な進歩主義教育学校の元校の教育家(Foskett,Gary)を招聘、その教育経験を通して明らかになった葛藤を含めた教育の諸問題を直接、聞くことができた。 2022/8には2泊3日の研究会合宿を行い、研究報告と進捗状況を発表し、研究全体を構成する論点整理を行い、それぞれ自らの研究を全体構成の中に位置づける確認を行った。2022,12/3月に大阪公立大学教育学会と共催で、きのくに子どもの村学園・副園長を迎え山﨑を含むパネラー3人のシンポジウムを開催した。翌日大阪・パドマ幼児園長秋田光彦と幼稚園保護者の「親性」意識の現状について座談会と研究会を行った。 同3/18-20、徳島の遍路宿で、不登校児童生徒の居場所「ひとみ学舎」代表・居上公美子と保護者、及び20年以上継続の「子ども遍路歩き」の関係者と座談会形式のインタビューと「親性」生成教育に関わるアンケート調査を実施し、貴重なデータを得た。 研究成果は、各自が著書、学会発表、論文投稿、講演などを通じて公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のために、予定していた海外への調査出張がほとんど実施できなかった。そのぶん、研究はやや遅れている。ただその中で2023年2月に入ってドイツ(山名)とイギリス(山崎)への渡航を実現でき、遅れていた部分の一定程度の回復ができたが、まだ当初の想定の7-8割程度しか進んでいない。中国のカウンターパートとの間では、おもに楊奕によって、オンラインでの情報の収集や交流を進める努力は続けられ、政策面に関わる情報を得ることができた。 海外調査の補完として、カウンターパートとオンラインでの講演と聞き取り(グラント純子)や英国の著名な教育家・Foskettの招聘などを行って一定の成果を得ている。 おもに国内の活動によって研究している者は、比較的順調に研究の進展がみられた。2022/9に辻本が富山県八尾町の「風の盆」の伝統を維持する地域共同体の継承の仕方のうちに、前近代社会の共同体の人間形成の在り方を探る調査を実施したが、その「親性」生成にいかにつなげるか、短時間の単独調査では十分といえず再度の調査が必要である。 「親性」生成に関わる認識や理解度を調査するためのアンケート調査用紙は議論の末、作成できたが、実際のそのアンケート調査の実施はまだ徳島での行ったのみで、データの蓄積はまだ不十分である。今後そのデータを、学生用、教育関係者用、一般成人用と分けて、増やしていく努力が必要である。それを海外でも実施できるよう、現在、英語版、中国語版を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は海外渡航が大幅に可能となる見込みであるため、当初の計画にしたがって、渡航調査を、可能な限り実施する。ドイツ(山名の哲学的文献調査や関係識者との学術交流、弘田の伝統習俗としての幼児・保育者支援の存在[ヘバメ]の調査、ドイツでの学会発表)、イギリス(山崎の英国子育て支援や「親性」生成に向けた教育のカリキュラム調査、豊かな人的ネットワークを生かした聞き取りや参与観察、世界教育学会での学会発表)、中国(楊奕の中国への渡航と関係文献の収集とその翻訳・紹介、カウンターパートとの共同調査や研究連携作り)、アメリカ(尾崎、子育ての新たな共同性を探求し、新たなホーム概念構築のために、文献収集と関係機関の訪問や識者へのインタビューなど)が計画されており、遅れの回復が十分見込まれる。そのほか、国内学会での発表(正保、榎本、遠藤ら)が予定されている。 12月に、中国の関係機関の研究者3名(首都師範大学2、中国人民大学1)を日本に招いて、中部大学において国際シンポジウムを企画している。幼児教育機関の整備に迫られている中国と最新情報を交換するとともに、制度やシステムの比較の上で、日本における「親性」の生成に有効な手立てを探る。併せて「親性」生成をめざす本研究主題の意義や有効性を、中国の教育研究者や教育実践者たちに理解されるよう努め、「親性」研究とその生成に向けた学術研究の国際的な連携を深める。 22年度に作成済み「親性」生成に関わるアンケート調査を、可能な限り国内・国外を問わずに実施し、そのデータの分析を行うことで、新たな知見を見出し、研究報告論文作成につなげる。 2023年度は、本研究の最終年度である。各自の研究テーマを全体の中で位置づけつつ、その研究成果を論文化し、報告書作りにつなげる予定である。
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