研究課題/領域番号 |
21H00920
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松田 尚樹 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 客員研究員 (00304973)
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研究分担者 |
中島 覚 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (00192667)
阿部 悠 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (00722472)
工藤 崇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (20330300)
藤淵 俊王 九州大学, 医学研究院, 教授 (20375843)
神田 玲子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所, 副所長 (40250120)
岡崎 龍史 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (50309960)
桧垣 正吾 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (50444097)
北 実 鳥取大学, 研究推進機構, 助教 (60359875)
角山 雄一 京都大学, 環境安全保健機構, 准教授 (90314260)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 放射線教育 / 医療被ばく / 原子力・放射線災害 / 意識調査 / 水晶体線量 / 甲状腺細胞 / I-131被ばく |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、STEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)の概念を取り入れた、放射線と自己の関わりにおいて意思決定を行い、具体的な行動につながる教育プログラムを構築する。研究プロセスとしてはまず受講者の意識調査及び放射線の測定値収集を行い、それらに基づく教育コンテンツを作成する。教育実践とブラッシュアップを経て、放射線EBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく立案)支援プログラムを開発し、放射線関連学協会等との連携により発信、拡大、持続化を行う。
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研究実績の概要 |
2022年度は、 医師及び医学科学生に対する意識調査を継続実施し、前年度に得られた傾向、すなわち予想以上に患者と医師間の放射線コミュニケーションが取れていること、また半分以上の学生が放射線災害時の医師の役割として緊急被ばく医療のスキルまでを身に付けるべきであると考えていることを再確認した。 学生向けに医学科教育(放射線基礎医学)、大学院教育(放射線防護学)コンテンツを作成し、実使用に供した。また医師向けには水晶体被ばく線量の実験的な測定による推定と臨床実測データに基づくコンテンツを作成し、医療放射線診療従事者に対する教育に実践した。具体的には、散乱X線の実験測定系における眼の近傍の推定線量0.065mGy/minから推定すると60分間の手技13回で水晶体年間線量限度、129回で白内障のしきい値を超える。病院医師の時間あたり水晶体線量は防護眼鏡未装着で平均0.026mSv/min、最大値0.125mSv/minで、防護眼鏡装着介入によりそれぞれ0.009mSv/min、0.029mSv/minに低下した。 さらに新たな試みとして福島第一原発廃炉作業者教育用コンテンツ作成に新たに取り組み、Red-alpha zoneおよび原子炉格納容器内における中性子とアルファ線被ばくに対する放射線防護と不安解消、意思決定に関する研修において実践した。 培養甲状腺細胞を用いた I-131被ばく影響の基礎データ取得については、従来のDNA損傷と微小核生成に加えて染色体異常の解析により急性影響、慢性影響(発がん)の両方の生物学的モニタリングデータを得た。さらに新たな指標としてエクソソームの有用性について検討を始めた。医療被ばくプログラム、環境放射線被ばくプログラム、フィールドモニタリングプログラム、モニタリングラボの4つのプログラムへのSTEAM化は開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
意識調査は継続調査も含め完了した。モニタリングデータについてもフィールドモニタリングは今年度も実施できなかったが、水晶体被ばくに関するラボモニタリングと新たに臨床モニタリングのデータも併せ教育コンテンツを作成し、実使用に供した。I-131被ばくの生物的モニタリングはDNA損傷、微小核に続き、染色体異常の解析も開始し、慢性影響(確率的影響)を指標とした、モニタリングの可能性について検討を始めた。 また、新たに廃炉作業者への基礎放射線教育を岡崎研との連携により実施し、特殊な放射線環境において必要な教育の方向性を考察した。途中経過の報告と議論に関する研究分担者間の連絡状況も良好である。このようにコンテンツ作成と実践までは順調に進行しているが、STEAM化への再編成が遅れており、全体としてはやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究分担者との綿密な連携のもとに、意思決定のためのSTEAM化(医療被ばくプログラム、環境放射線被ばくプログラム、フィールドモニタリングプログラム、モニタリングラボ)と実践を通じたブラッシュアップを集中的に行う。教育パッケージの出口戦略として、HPでの公開、放射線関連学協会での発信に加え、共著による教科書の編集も開始し、メンバー間の連携強化とともに研究成果の実効化を推進する。
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