研究課題/領域番号 |
21H00923
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
石川 幹人 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任教授 (20298045)
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研究分担者 |
菊池 聡 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (30262679)
吉川 厚 関東学院大学, 理工学部, 教授 (50444120)
山本 輝太郎 金沢星稜大学, 総合情報センター, 講師 (60887058)
水本 正晴 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (70451458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | 科学教育 / 科学リテラシー / 消費者教育教材 / 批判的思考 / 科学性評定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、消費者向け教材のプラットフォームを構築し、昨今のフェイクニュースが蔓延して真実や事実が見えにくくなっている状況において、市民リテラシーを形成する方策の手がかりを提案する。 「物事の本質に迫る判断力」を身につけるには、ある種の体系化された手順が必要である。単純にネット上の議論を重ねるだけでは身につかない。かといって学校のような半ば強制力が伴う環境に一般市民は置かれていない。そこで本研究では、身の周りの問題を解決できる情報を有するインターネットサイトに“魅力的な教材”を準備しておき、その教材で学ぶことによって、問題解決能力が増進して成長実感が得られる状況をひき出すことを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、消費者向けの科学リテラシー教材を作成するプラットフォーム環境を構築して、科学教育に資する教材開発や評価を増進させることを目標にしている。その成果は、「疑似科学を科学的に考えるサイト」(https://gijika.com/)にて順次公開し、意見を求めるとともに、広く消費者の利用を促進していく計画である。そのため本年度はまず、従来の科学コミュニーションを中心とした研究向けのサイトデザインを、科学リテラシー教育向けのサイトデザインに変更した。 本年度はまた、教材作成のプラットフォーム環境の基本整備を行った。2025年度までの運用を想定して、将来のインターネットの発展に耐えられるように、比較的新しいサーバー環境に基本機能を構築した。そこでは、これまで開発してきた基本要素機能を組み合わせて教材作成できるようにシステム設計および開発を行った。 具体的には、教材の中で使用者の知識や信念を査定して、教材内のシナリオを分岐する機能をパッケージ化して教材に組み込めるように整備した。また、集合知をとりいれたフィードバック機能の実現を図った。本機能は、あらかじめ批判的思考の高い人がとる行動傾向を調査してデータベースに格納しておき、教材利用者の教材内の選択行動に対して「批判的思考の高い人は、あなたのような行動でなく、別のこの行動をとっています」などとフィードバックし、行動タイプの是正を図るものである。 こうしたプラットフォーム環境の基本整備にもとづいて、今後具体的な試験教材を作成して、教材作成環境の評価を行い、それをもとにプラットフォーム機能の更新作業を重ねていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発中の教材プラットフォーム上では、疑似科学広告の欺瞞性を認知する度合いを高める教材を試験的に作成している。本年度は、消費者庁が研究報告している「打消し表示」(広告に小さな字で書かれている付帯条件など)に関して消費者がどのように捉えているかを実験的に究明した。その研究を通してプラットフォームに有効な機能の要件を洗い出すことできた。 また、教材に娯楽性を加味することで消費者への教材普及が高められるという構想について、「消費行動のおかしさに笑いながらその奇妙さに気づき、自らを反省するきっかけにする」というコンセプトのもと、試験的な漫画教材を作成した。どのような形態でメディアに提供するかによって消費者の受け取り方や楽しみ方が異なる可能性があるので、そこの知見を得て、これもプラットフォーム開発やその機能増強の手がかりに活かせる見込みである。 さらに、疑似科学信奉と批判的思考の関係について、二重過程理論や時間割引の観点から調査してデータを収集した。かねてより疑似科学信奉と超常信奉のあいだに関連性があると見込まれ研究が重ねられてきたが、昨今では、陰謀論信奉との関連性も指摘されるようになっている。こうした信奉は必ずしも消費者の批判的思考が弱いからではなく、批判的思考が誤った形で発揮された側面もあると見込まれる。この辺の構図を究明するための実証的な手がかりが集まった状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
集合知をサーバーに蓄積したデータからフィードバックする機能が整備できているので、その機能を使った教材効果の試験的な研究を行う。とくに批判的思考能力やその態度の増進を図る効果があるかどうかの実証的な検証を行う予定である。当面は疑似科学信奉について題材とするが、それを超常信奉や陰謀論信奉にも拡大していきたい、 使用者の知識や信念を検知したうえで教材が分岐する機能についても、試験教材を開発して、プラットフォーム機能の利便性の評価を行う。その適切な分岐処理に項目反応理論が応用できないかと考えているので、その可能性について精査していきたい。 また、教材への娯楽性の導入方法について、メタ認知ゲームや漫画の利用を構想している。これらの着想をさらに具体化することによって、当該サイトに、多くの試験教材を成果公開し、消費者教育に資する環境を提供して、教材開発のプラットフォーム機能の充実に今後つなげていきたい。楽しみながら学習するうちに批判的思考が身につき、消費生活の相談にのれるリーダーが養成できる教材が完備することを目指していく。
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