研究課題/領域番号 |
21H00975
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 立教大学 (2023) 九州大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
阿部 拓郎 立教大学, 理学部, 教授 (50435971)
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研究分担者 |
桑原 敏郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60524725)
吉永 正彦 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (90467647)
村井 聡 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90570804)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 超平面配置 / 対数的ベクトル場 / 斎藤の原始微分 / 有理Cherednik代数 / レフシェッツ性 / 自由配置 / SPOG配置 / 加法定理 / 除去定理 / free filtration / 制限定理 / Hessenberg多様体 / Solomon-寺尾代数 / 准不変式環 / 原始微分 / 有理Cherednik代数と準不変式 |
研究開始時の研究の概要 |
超平面配置はベクトル空間中の超平面の有限集合で、それに接する多項式ベクトル場全体を対数的ベクトル場という。対数的ベクトル場の研究は代数的に非常に発展したが、関連する幾何学や表現論の研究が代数と比べてあまり進んでいないという問題点があった。そこで近年研究代表者らにより創始された超平面配置の代数と幾何、表現論との新しい関連研究をさらに推し進め、超平面配置の対数的ベクトル場の幾何学と表現論を確立させることを目指す。具体的にはHessenberg多様体のコホモロジー環、及び準不変式環と有理Cherednik代数との関係構築を行うことで、これらの目的を達成したい。
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研究実績の概要 |
本年度はまず、自由配置に一枚超平面を付け加えた場合の構造が自由でない場合でも、ある程度決定できることを証明した。その構造は私が2021年に証明し近年特異点論的観点からも注目を集めているSPOG構造であり、本結果はそれが組み合わせ論的に定まるケースを多く包含していて、対数的ベクトル場の構造決定論における大きな進展である。もう少し具体的に説明すると、ある配置が自由配置であり、その配置に含まれないある超平面への制限がやはり自由配置であるとする。この場合、それらの指数の間に良い関係があれば、その超平面を加えた新しい超平面配置も自由であることを主張するのが、寺尾の加法定理である。他方、寺尾の加法定理の条件を満たさずとも、付け加える前の配置及び制限が自由である場合が存在することは知られていた。この場合加えた後の配置の対数的ベクトル場の代数構造解析は謎であり、大きな問題であった。これに対して上述の通りSPOG理論を巧妙に適用することで、ある条件下では加えて得られる新しい超平面配置の対数的ベクトル場がSPOG構造を持つことが分かった。これにより自由配置に近い配置の対数的ベクトル場の構造論が大きく進展した。
またこれを用いて、学生の山口徹氏とともに、自由配置の間の配置が自由であるかどうかという問題に対して一定の解答を与えた。具体的には、まず一般次元において、自由配置から二枚超平面配置を除いたものがやはり自由であるならば、この二つの間に一つは自由配置があることを示した。更に三次元の場合に限定すると、二枚を三枚に増やしても、自由なままこの二つを繋ぐpathがあることが証明された。このような研究はこれまでに例がなく、SPOG理論の強力さをよく表しているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は超平面配置の代数学たる対数的ベクトル場の総合的な研究である。それらは表現論、幾何学、組み合わせ論など様々な側面から対数的ベクトル場を研究することであるが、同時にそれらの根幹をなすのは、対数的ベクトル場そのものの代数的研究である。対数的ベクトル場の研究は自由配置の場合が主であり、本研究計画でも自由配置はその研究において最も重要な位置を占めている。他方、自由配置は極めてまれなものであり、自由でない超平面配置の代数を用いた研究はこれまでほとんどなされていなかった。このような状況において、私は自ら構築したSPOG理論を展開し、自由配置付近にある配置の代数構造論に新しい視点を導入している。そしてその応用として、自由配置の研究においても新しい知見をもたらした。これらは代数的研究としても十分興味深いものであるが、同時にこれらの配置に対応する幾何学・表現論・組み合わせ論の総合的研究にも大きく資するものである。このような、研究の幹の部分における進展を鑑みて、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、まず対数的ベクトル場の構造論の更なる進展を企図する。本年度の研究により、自由配置の研究においても自由でない配置の研究が大きく寄与することが確実となった。特に自由配置の近くにある配置を研究することは、自由配置の決定論と深くつながっているため、この「自由配置の近傍理論」をさらに進展させ、研究の幹としての対数的ベクトル場の構造論を進展させる。具体的には、今回の研究を発展させ、自由配置に制限が自由な配置を加える場合で、かつ加えた後の配置がSPOG配置でないようなケースを考察したい。このようなケースは多数存在しており、SPOG配置となるかどうかの判定は、今年度の結果の条件を満たさないケースについてはいまだ未知数である。三次元の場合は常に条件を満たすため加法はSPOG配置となるため、次に四次元配置を考察し、それらの加法における例を多数計算機実験などを通して得たうえで、共通点を探索するところから研究を開始したい。 また自由配置の間に自由配置からなる道があるかどうかという問題も、さらに進展させる。単純な問題として、次元が高い場合で距離が三枚以上離れている自由配置の間に自由配置からなる道があるかどうか、というものがある。また、三次元で三枚除去した場合の道の定理の、多重配置的側面からの研究も行いたい。同時に自由だけからなる道がない場合、それでもその間の配置の代数構造を決定する問題にも取り組みたい。これは帰納的な方法を用いた寺尾予想へのアプローチとして最も期待されている方法であり、非常に大きな問題として、私を中心に研究に取り組みたい。
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