研究課題/領域番号 |
21H01001
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松江 要 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (70610046)
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研究分担者 |
石渡 哲哉 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (50334917)
高安 亮紀 筑波大学, システム情報系, 助教 (60707743)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 有限時間特異性 / 発展方程式 / 精度保証付き数値計算 / 力学系 / 数値解析 / 微分方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
自然現象を始めとした様々な法則は、典型的に微分方程式系を用いて記述されるが、時に解がある時刻において定義できなくなる、あるいは変化が滑らかでなくなる事がある。例えば有限時刻で解(の絶対値、一般的にノルム)が無限大に発散する「解の爆発」などがある。本課題ではこのような現象を総称して「有限時間特異性」と呼ぶことにする。 個々の系や現象で長年研究されてきた有限時間特異性が「いつ、どこで、どのように起こるのか」「共通・相違メカニズムは何か」、さらに数値的考察の観点から「どのように"正当性を持って"可視化できるのか」、これらの知見を様々な角度から体系化する事が本研究課題の目標である。
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研究実績の概要 |
実時間では有限時間爆発を伴う偏微分方程式に対して、複素時間を導入することによる時間大域解の構成を、精度保証付き数値計算で実現した。 時間を記述する(複素)空間での積分路と解の構造により、考察している時間を変数とする複素関数としての解の「特異点」の存在が示唆された。 別の考察として、曲率流に痰を発する準線型放物型偏微分方程式の解の漸近挙動の精緻な記述を行なった。さらに、時間遅れを伴う微分方程式の爆発解のシンプルな特徴づけに対する一考察も提唱した。 常微分方程式については、初期値の摂動に対して不安定な爆発解を無限遠ダイナミクスの構造に付随させて「サドル型爆発解」と名づけ、その特徴づけを精度保証付き数値計算を併用して行なった。漸近挙動、爆発時刻に対する特異性を、可視化も含めて実現した(おそらく)世界初の例である。また、タイプ1爆発解の複数項漸近展開のシステマティックな導出を行い、それを特徴づける代数的な量が無限遠ダイナミクスの線型構造と一対一対応する事を示した。これにより、爆発解の存在と力学系的特徴づけ、漸近展開が表裏一体である事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限時間特異性の様々な側面をシェアするための勉強会は、2022年度も想定の回数開催する事ができた。 論文誌の選択ミス(編集部の怠慢)などで査読などに時間を必要以上に要した側面もあったが、当初計画していた様々なタイプの微分方程式の爆発解の特徴づけをハイレベルな雑誌で論文として発表できている。 次の方向性もある程度明らかになっている事より、進捗は概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
力学系の観点から、「非自励的常微分方程式」における爆発解の特徴づけを行う。 これまで考察していた系は全て、ベクトル場が時間に陽に依らない「自励的」な系であった(時間遅れ方程式を除く)。非自励系は外力を伴う力学系を生成する微分方程式系として自然に生じるが、その力学系的(不変集合などの)構造は自励系と大きく異なる。このような系の爆発解を含めた有限時間特異性を、微分トポロジーの知識も援用して解明する。これを皮切りに、自己相似解、漸近展開、精度保証付き数値計算、偏微分方程式や時間遅れ方程式などの無限次元発展方程式における有限時間特異性の体系的記述を促進させる。
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